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詩想い13



「イオン様っ!!」

自分を呼ぶ、少女の声がいつもより必死だったのが印象的だった。


「アリエッタ?どうかしたのですか?」
自分を呼んだ少女、導師守護役のアリエッタが血相を変えて駆け寄ってきた。後ろを来る兵士もまた必死そうだった。
「た、大変……です…」と、息切れ切れにしゃべるアリエッタに変わって、ひとりの兵士が代理して報告してきた。

「キムラスカ・ランバルディア王国王女ナタリア殿下と、同じくジョゼット=セシル少将が、誘拐されたと報告が来ました。」
「なんですって!?」
「しかも、今回は犯人達が声明を残していかれました。」
報告書らしき紙を兵士に渡され、それに目を走らせた。

 ”操演者に告ぐ、解放の巫女を我らに返還していただこう
  我ら、ついに世界の立て直しを実行する”

と綴られていた。

「……」
「イオン、様……」
アリエッタが心配そうにイオンを見つめた。柘榴の瞳がイオンの緑の瞳をまっすぐに見ていた。
左手が微かにうずいた。

「アリエッタ、マリエルを呼んできて!」
「は、はいっ!」
「それとヴァンの妹も呼んできて。」
「はっ。」
アリエッタと兵士がそれぞれ動き、その場を去った。


「……させるものか、この命に代えても。」


握った手に、血が伝い、ゆっくりと大地へと還った。




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