「さーみーっ」
冷たい風に首をすぼめていれば、自分よりも全然寒くなさそうに弟の大樹が叫ぶ。
いつでもどこでも元気な奴だ。
羨ましい限りで、はあ、と短く息を吐く。
「春兄春兄! 息白いぜ! 真っ白!」
「そうだね」
「はーっ」
「吐きすぎ。あまり走り回るなよ。転ぶぞ?」
「ダイジョーブ!」
その自信がどこから来るのか分からない。
もう、と苦笑した日向春樹は右手に持っていた荷物を左手に持ち替えた。
つい買いすぎてしまったせいで腕がだるい。
「なあなあ春兄、今日いっぱい買ったじゃん?」
「うん、まあ……お徳用だしね」
「パーティーしようぜパーティー!」
「パーティー?」
「鍋とか! ユキちゃんとか呼んでさ!」
「鍋かぁ……」
ふむ、と春樹は思案する。
確かに材料はたくさんある。一応献立なども考えて購入したものではあるが、特に固執するほどのことでもない。
何より、こうやって外を歩いていると寒さが一段と厳しく感じられた。
そんな状況で鍋を囲むというのは――想像しただけでも温かそうだ。
「いいかもね」
「やっりぃ!」
「でもやるなら明日かも」
「えーっ」
「今日じゃ急すぎるだろ、みんなの都合だってあるんだし。それに鍋の材料はあるけど、それだけじゃ物足りないだろ? また明日買ってこようよ」
「……! 春兄、フトッパラ!」
「はいはい」
現金にもパァッと顔を輝かせる弟に苦笑する。
喜ばれて悪い気はしないけれど。
「春兄! 明日も買い物手伝う!」
「ありがと」
相変わらず元気な弟に笑って、春樹は今日と明日の献立に頭を巡らせた。
重い荷物も、こうして二人歩いていれば、あまり気にならない。
―――――
大樹は春樹の荷物持ちをするのは結構好き。頼られてる!って気持ちになるようです。(倭鏡伝)
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