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◇ 進 藤 君 家 の 家 庭 事 情 ◇
「し、静―!お前なんでここに!」
朝目が覚めて階下に行くと、いつもは無いはずの顔があった。
「おはよう、融ちゃん。だけどもうお昼だよ」
にっこりと笑って当然のようにいるその子は、僕の幼馴染の妹で・・・・
「融、おはよう。とりあえず着替えてきたら?」
狼狽していた僕に母が呆れたような声をかける。
寝起きの僕は当然パジャマで、寝癖だらけの頭で。
何で朝っぱらからいるんだよーと思いつつ、慌てて踵を返して二階に上がる。
後ろから母の「お父さんも起こしてきてねー」という声が響いていた。
目の前で静が母と笑顔で話しながら昼食を食べていた。
この幼馴染の妹は「おば様のファンなの」と言ってちょこちょこと遊びに来る。
肝心の幼馴染はこの頃忙しくてまったく来ないというのに。
両親同士が親友というのもあって、小さい頃はその幼馴染といつも一緒に遊んでいた。
そのうちに静が僕たちの後をいつもついて来るようになって。
末っ子の僕は妹が出来たみたいで嬉しくてよく一緒に遊んであげていた。
だから静は僕にとって半妹的な存在なのだけど・・・
「おじ様、本因坊おめでとうございます」
静がにっこり笑って父に祝いの言葉を述べる。
「静ちゃんがお祝いにケーキを焼いてきてくれたのよ。後で食べましょうね」
母がにこにこと嬉しそうに言っている。
お祝いにケーキ?だけどいいのだろうか?
「静、お前いいのか?」
「何が?」とにっこりと微笑んだ顔が僕に向けられる。
だけど・・・
「だって、おじさん」
そう、父が本因坊の座を守れたのは静の父親に勝てたからで。
「大丈夫よ。お父さんったら『やっぱり本因坊戦の時の進藤は強い』って嬉しそうに言っていたもの。
今日だって朝からお兄ちゃんと棋譜の検討してて、私なんて目に入ってなかったみたい。」
父と静の父親は世間一般的に知られているほどのライバル同士でもある。
「だからって・・・」
なお、僕の幼馴染である静の次兄は父親同様中学時代に碁のプロとなって活躍している。
「そうそう、お兄ちゃんから融ちゃんへの伝言。『早くこっちにこい!』だって」
この頃、同様のことを父の周りの人たちに言われることが多い。
特に幼馴染は会うたびに言ってくる。
だけど、僕はまだ・・・・
僕は何も言えなくて静から視線を外し、黙って食事を続けた。
「まあ、私はどっちでもいいけど。碁打ちでもそうじゃなくても」
だから静がそう言いながら、
僕に意味ありげな視線を送ってきていたのにまったく気がつくことは無かった。
本当にいつもありがとうございます。
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