英雄は彼方へ消える 嘘予告No.18


 潜入中、である。
 アキラは、イリヤの助けを借りて、気配遮断、視線誘導、魔力閉鎖、非流動反射壁(水)など、いくつもの防備を以って、魔法の国へと密入国を試みていた。

 『あら。あれ、アキラの友達じゃない?』

 ネギたちが一緒に居るのは既に知っている。
 本来なら、アキラも彼らに紛れて渡界するのが一番楽だっただろう。
 けれど、武装持ち込み禁止というのはあまりにアキラにとってリスクが高かった。

 基本的に、イリヤが魔法世界の住人を信用していない。
 信用してもいいのはタカミチだけだと何度も言われてきていた。
 もし仮に、イリヤが貿易局なり更にその上なりに差し押さえられてしまったら、アキラでは奪還が不可能。
 片時も離すべからず。可能性の話であったとしてもリスクがある以上、イリヤを手放すわけにはいかなかった。

「あれは……亜子たち?」

 何故ここに、という驚きを、アキラは必死で抑える。
 隠蔽制御が疎かになってしまっては密入国がバレる。
 だが、彼女たちを放っておくこともアキラには出来ない。

『いいえ。放っておきなさい。どうせ向こうに着いた時点でネギたちも気づくでしょう。
 その後強制送還。今アキラが出ていくよりは余程安全だわ』

 確かにイリヤの言には一理ある。
 アキラがそのまま傍観を選択したのは正しい選択だったろう。
 案の定、到着と同時に亜子たちは発見された。
 その混乱に乗じて、セキュリティエリアから抜けようとしたアキラだったが、ネギが警備兵を呼び始めた事により難しくなる。

「厄介な事を……もしかして、私達に感づいたのかな?」
『それはないわね。この場で気づいている人間はコノカだけだって保証してあげる』
「でも、これじゃあすぐには逃げれないよ。透明人間状態でも、感触はあるんだから。囲まれたら手がでない」
『となると、籠城かなぁ』
「私の魔力を8割消費するとして、あとどれぐらい保つ?」
『10分てとこかしら。コノカから魔力供給を受けて1時間ってところね』
「それは、アレを使わないで、だよね」
『当然よ。アレを使うくらいなら捕まった方がまだマシだわ』
「じゃ、籠城作戦開始だね」

 誰にも見つからず、この騒ぎが収まるまでやり過ごす。
 混乱の最中であったとしても、隙を見つけたら即逃げればいい。

 だが。

「ネギっ」

 そんな考えは、明日菜の悲鳴と。

<I am bone of my sword>

 求めていた人の微かな声と、そして迫り来る剣弾に、容易く崩れたのだった。




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