「月牙…天衝っ」 足場を作り空中に浮かんだ一護が斬月を振り下ろし、ソコから鋭利な月が新月の空へと放たれ、その刃を受けた虚は言葉に出来ない咆哮と共に姿を消した。 魂送が終わり一つ深く息を吐き一護は、そのまま足場を解くと地上へと戻る。 「あんな雑魚一匹に手こずらされるなんて…まだまだ死神としては半人前だな」 「うっせぃな。俺は死神じゃねぇ。死神代行だ。だ・い・こ・う。」 地上で傍観に徹していた滅却師の衣装に身を包んだ雨竜が溜め息と共に洩らせば一護は唇を尖らせた。 「怪我は?」 「どっこも。それこそ、あんな雑魚相手に掠り傷なんて作ったらルキアに何言われるか…」 一護が言葉を区切り『ヤベェ』と思ったのも束の間。雨竜は何も言わず一護に背中を向けた。 心配の言葉をかけたのは雨竜だ。一護は狼狽えた。 「…いや、ちげぇよ。悪かった!お前に心配されるなんて思ってもみなくてさ…」 「別に心配なんてしていない」 背中を向けたまま言葉に棘を刺した言い方は、まさにヤキモチ。 一護は雨竜の背中を抱き寄せた。 「ごめん。お前が背後にいたから、ゼッテーあの虚の攻撃を一撃でも通すかって力んだら…」 雨竜は回された腕に新しい傷を見つけた。 「やっぱり怪我をしてるじゃないか」 「大したことない」 「だが、虚が付けた傷だ。油断はするな」 「じゃあ、お前が治してくれよ。」 「滅却師には治癒の能力は持ち合わせていないが?」 「例えば…そうだな。お前の家で手当てをしてくれるとか?」 「じゃあ、聞くがキミの家は医者ではなかったか?」 「細かい事は気にするな。この傷…治してくれるのか?」 「僕のために付いた傷だ。仕方ない」 「んじゃ、帰るか。お前の家に」 一護は、そのまま膝を下ろすと雨竜の肩を抱き膝裏に腕を回すと抱え上げ、姫抱きにすると地を蹴って、闇夜へと舞い上がった。 新月の空は暗く。 死覇装は黒く。 滅却師の衣装がより白く輝いて見えた。 (この白を護るためなら、俺は腕を紅く染めようとも血を被ろうとも構わない。石田に手を触れるモノは俺だけで良いんだ) 雨竜が聞いたら顔を真っ赤に染めて怒るような事を思いながら、一護は空をかけた。 死神な一護と(何もしてませんが)滅却師な雨竜が書きたくなりました。拍手ありがとうございました! |
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