眠りにつこうと、ベットの中へもぐりこむ。 まだ冷たい、ぬくもりの存在しない其処に、自分ひとりの温度をおしこむ。 毛布とその敷布団の間に自分の体を横たえて、 電気を消して真っ暗な部屋は、昔読んだ絵本の、大きな鯨に飲み込まれた 玩具の少年になったようだった。 無限に広がる宇宙の闇が、ひた、ひた、と、足音を忍ばせて此処へ向かってきている。 眠気に誘われるまでに、自分は、そのかすかな恐怖と、未だ温まらない寝具への苛立ちと、 そして孤独感と、…それらと戦わねばならなかった。 目を閉じても開いても、同じような闇の世界。 心臓が脈動する音だけが、耳に痛い。 アレンは身震いをした。 ブルル、頭の近くに置いた携帯電話が、そのとき、かすかに震える。 振動が間近に伝わり、アレンは上体を起こして携帯電話を掴んだ。 メール着信の知らせが、点灯している。 パコ、と折りたたみ式の携帯を開くと、メール着信一件、と表示されていた。 宛名に目を通す。 送信者:「ラビ」 タイトル:「もう寝た?」 内容:「夜遅くにメールしてごめん!特に用事というのはないんだけど、 一人で酒飲んでて。今から風呂に入って、寝ようと思って。夕飯の皿洗ってたらさー なんでか頭の中にお前の顔が浮かんできたんだよなぜかー。キモイとか言うなよ。 げんきしてるか?」 最後のげんきしてるか?だけの一文が、ご丁寧に改行されていた。 おそらく、ラビが一番言いたかった言葉なのに、気恥ずかしくて最後に回された言葉なのだろう。 アレンの目尻から頬にかけて、うっすらと涙が線を描いた。 たった一言。こんな言葉で、いつも、あなたに救われてきた。 ありがとう。 携帯をパコン、と閉じると、それをぎゅっと胸に抱きしめる。 返事は、明日の朝にしよう。 きっと今夜は、もう、こわいゆめをみないはずだから。 |
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