音のかけら











ふわり。

ラクスの髪が風に舞った。



さらり。

肩を抱くキラの腕に、桃色の髪が、触れる。



髪を、梳く。

キラの手が、さらり、さらりと、やわらかなラクスの髪を撫でてゆく。

ラクスはその心地よさに目を閉じた。



穏やかな夕暮れ。

海に大きな太陽が沈んでゆく。

その光景を瞳に映しながら、二人はただ佇んでいた。



とくとく。

心臓の音。

互いの音。

静かに伝わって、安心する。



だから。



「ねえ、ラクス……」

キラが、息を吐き出すように、自然にそう言った。

「はい……」

ラクスも答える。



二人とも、分かっていた。

また、戦いの日々になる。

戦いが自分たちを巻き込んでいく、と。



二つの音が重なるように、体に伝わる。

ずっと、ずっと。そうであるために。



「行かなくちゃ、ね……。もう……逃げてはいられないから」



ラクスへと回した腕に力を入れて。キラが、こぼすようにぽつりと。



「はい……分かって、います」



ラクスの体が、キラの胸にさらによる。



とくとく。

心臓の音が鳴る。

ゆっくり。

おんなじ、リズムで。



ああ、ずっとそうであれたらいい。

それが、願いだから――。












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