*ここから始める恋人距離 〜土方編〜 * 土方さんと恋人同士になりました。 と言っても、土方さんはとても忙しい方ですから、なかなか会えないのです。 「久しぶり、だな」 「はい、お元気でしたか」 「ああ、まあ」 私と土方さんは、松平さんのお節介……もとい紹介でお見合いすることになったのです。 ほとんど言いくるめられる形ではありましたが、お互い少し付き合ってみようということになりました。 「なんつーか、会うたびに久しぶり、だな」 「そう、ですね。忙しい中……ありがとうございます」 土方さんと決めたのは、 久しぶりでごめん。忙しいのにごめん。そういうことを、謝らないこと。 「あの、土方さん。そろそろ2か月になりますし、松平さんももう何も言わないでしょうから……」 恋人を、やめてもいいんですよ。 そう言おうとしたところで、土方さんは少し慌てて私の口に人差し指を当てた。 「待て。その結論はまだ早い」 私が言葉を止めたのを見て、土方さんは指を離し、ポケットに手を入れた。 「迷惑になるかと思ってやめてたんだが、お前さえよければ」 すっと差し出された紙を受け取る。 二つ折りにされた紙には、11桁の数字だけが書かれていた。 「夜なら、出られる」 「い、いいんですか?毎日かけてしまうかもしれませんよ?」 「毎日でも構わねぇさ」 そんだけ喋ることがあるならな、と笑う。 「少しずつ距離を縮めていくか。長い道のりになるだろうけどな」 「構いません、ゆっくり恋人に近づきましょう、土方さん」 (とりあえず、俺のことは名前で呼ぶように。) |
|