拍手、ありがとうございました。 『うつせみの虜』番外編 水谷は試合の後、ひとりで歩いていた。 大会は最後の大将戦で勝つことができ、優勝で終わった。 悠がよくやってくれたと思う。 いきなり退部届を出してきたり、最近情緒不安定ではあったけれど、大会前には落ち着いてくれた。 何があったのかは分からないけれど、いい顔をするようになったから、それもいいだろうと思っていた。 幸せなのが一番だ。 だが、大会が終わった後、悠に駆け寄った相手には驚いたけれど。 的場渉。 校内でも有名なモデルをやっている後輩。 悠と親しいとは思いもしなかったけれど、うれしそうに悠におめでとうと言っている姿は好感を持てた。 思わず、いい友達だなあと声をかけると、悠がふわりと笑った。 優しげな子供のような顔で、こんな顔で笑うことができたのだと驚いた。 ただ、その後がさらに驚かされたけれど。 いきなり渉が悠の腕をひっつかんで、ぐいぐいと連れていってしまったのだ。 しかも、水谷を一睨みして。 あれはなんだったんだろうか。 よくわからないけれど、なんとなくあの後から彼女に会いたくて仕方がなくなったのだ。 結婚まで考えている愛しい彼女。 彼女に会いたくて仕方がなくて、本当は打ち上げがあったのに、部長だというのに放って帰ってきてしまった。 「…んー」 携帯が振動する。 見れば、彼女からの連絡。 試合を見にもきてくれていた彼女はこの近くの喫茶店で待ってくれているらしい。 「……」 自然と頬が綻んだ。 めいっぱい甘やかしてもらおうかな。 うきうきと水谷は防具の入った袋を揺らしながら、彼女の元へと急いだ。 =================================== ありがとうございました。 | |
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