深夜。
 不意に手元の携帯が鳴った。
 それは確認するまでもなく、僕の大切な人からのコール。緩む頬を自覚しながらフリップを開けると、僕を気遣うような彼の声。

 ―― オッサン、今何してる?

 遅くなる日にはいつも必ずその旨を告げているのに、必ずかかってくる一本の電話。
「まだ仕事中だよー」
 そう告げれば、働き過ぎだとか仕事中毒だとか、そんな小言が飛んでくる。
 分かってはいるのだけれど、こればっかりはしょうがない。
 僕がいつもの様に「ごめんごめん、もうすぐ帰れるから」と言うと、彼はいつもの様に「早く帰ってこいよな!」と、少し怒った声を上げて乱暴に電話を切ってしまう。
 彼と暮らすようになってから、何度も交わされた会話。口を尖らせ拗ねた表情が目に浮かび、僕はもう一度、頬を緩めた。

 帰ったら、彼を抱きしめて沢山のキスをしよう。一緒に暮らしているとか、毎日会っているとか、そんなことは関係ない。
 僕だって早く帰れなくて寂しいんだよ。と言ったら彼は一体どんな表情をするのだろうか ――。

  END

  2010.11.12

【 web拍手でキミの話 [01] 今何してる? 】
>>お題配布元:あなぐら




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