「完璧」

ずっと、アンドロイドは、完璧であるべきだと僕は思っていた。
人とは違うもの。その造形も、もちろん機能も。人類に叶わないなら、いっそ我々の理想の形を。
そう思っていた。

それを、覆すことになったのは、ある一体のアンドロイドとの出会いだった。

僕は、見るも無残に打ち棄てられたアンドロイドを拾った。始めは、そのパーツでも後で役に立つ
だろうと思っていたのだ。
それなのに、僕は、夢中で彼を修復していた。比較的損傷の少ない頭部を見て、惹かれずには
いられなかった。
髪の色は、灰色。最近のアンドロイドでは、奇抜なカラーを選択することが多いから、これはかな
り古いものだろうと思う。それでも、顔は酷く整って美しかった。中世的な優美な輪郭に、頬のラ
インに惹かれた。

彼は、発声機能を損傷していた。その分、意思の疎通は難しいと思っていたが、彼を見つめてい
ると、不思議とその思考は理解できたし、その動作が愛おしく感じられた。


彼が、完璧なアンドロイドなら、僕は彼を傍に置かなかっただろう。
完璧など、つまらない。彼の、何かを必死で伝えようとする様子が、僕は愛おしかった。だから、
つい彼に名前を与えてしまった。

グレイ。その名を呼ぶたびに、彼への愛おしさは増していく。彼は、僕の特別なアンドロイドになった。





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