案内された部屋は思ったよりも散らかっていた。

…… 片付けが苦手なのかな? ……

第一印象が?良く言えば几帳面、悪く言えば神経質?だったため、意外な光景にそんなことを思いながら(それらが他の者の仕業だと判明したのは随分と後のことになる)、勧められるままにソファーへと腰を下ろす。
見るからに高級そうなソファーの、予想に違わぬふかふかとした座り心地に、それまでの緊張などどこへやら。うっかり心を奪われていると、

  りりりりんっ

突然室内に響いた古風な電話の呼び出し音に、青年の眉間にくっきりと皺が寄った。

「・・・すまない。ちょっと失礼する」

職業ゆえか、席を立つ際に律儀に断りを入れてくれた彼へ「いえいえ、お構いなく」と勢い良く手を振り、他にすることもないのでぼんやりとその背に視線をやる。少し距離があるためにその内容までは分からなかったけれど、豊かなテノールで紡がれる言葉は優しくて心地良くて。まるで歌声のようなその声は、数日前から課題で睡眠時間をがりがりと削られていた上に緊張で張り詰めていた意識を緩めるのに十分で。そして ―――――― ……
数分後。

「さて、どうしたものかな・・・」

ソファーに身を横たえてすやすやと、それはそれは気持ち良さそうに眠る新人を見つけて、珍しく柔らかな苦笑を浮かべる支配人の姿がそこにあった。


☆04: 聖闘士星矢 『 歌声 』



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