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(アルカナ・ファミリア/ルカフェリ)
フェリチータの前で、ルカが背筋を伸ばして椅子に座っている。
「訓練をしましょうか」
まだまだ能力を使いこなせないフェリチータに、ルカは『恋人たち』の能力を使って心を読めと、そう提案してきた。
ルカと正面から向かい合うようにフェリチータも椅子に座り、集中し、じぃっとルカを見つめる。
(んー……)
聞こえるように浮かんできたのは、『お嬢様は大きくなられましたね』『そう言えば、お嬢様のお好きなお茶が切れてました』『お嬢様!』『お嬢様!!』、全て、フェリチータのことだ。
はぁ、と思わずため息が零れた。
「……ルカ」
「は、はい……?」
呆れた目で見つめ続ければ、たじろいだようにルカは身じろぎをした。
フェリチータに心を覗かせているこの状況。見られたくない、見せてはいけない部分は、きっとルカは隠している。ルカにはそれが出来るだろうし、それを見破れるほどフェリチータの能力は高くない。
ということは、ルカの心に浮かんでいることは、こうしてただフェリチータと対面しているときに思う、自然な内容なのだろう。
(あえて、読ませようとしてるわけじゃないよね……?)
そう思いたい。
そんなふうに推理してしまえば、フェリチータの口唇からはため息しか出てこない。
「え。お嬢様、どうしたんですか?」
慌てたルカが聞いてくるけれど、読んだものをそのまま伝える気にはなれない。
過保護だ甘やかし過ぎだと、そう思ってはいるけれど、あえてフェリチータから指摘するのは自惚れているようで。
もっとも、心を読んで得た情報なのだから、自惚れでも何でもないのだけれど。
「………ルカは、もうちょっといろいろなことに目を向けた方がいいと思う」
真面目にそう忠告すると、ルカは首を傾げた。
「はい……?」
思い当たる節がないように、不思議そうな表情を浮かべたまま、ルカは頷いた。 |
終 |
2012/06/24 ラブコレ2012夏・ペーパーより |
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