六道骸





僕が気付いたときには
彼女はもう既に今夜の夕食の買出しに出かけていて、
犬と千種は2人仲良くソファーの上で昼寝をしていました。

これがつまりどういうことなのかと言うと、
夕方から安売りされる食品をもぉ馬鹿みたいに後先考えず買い込んでくる彼女ですから、
きっと荷物の重みに耐えかねて、帰宅途中に行き倒れているということです。

やれやれと思いつつも足早に近くのスーパーを訪れれば、
案の定彼女はビニールの袋を3つ手に提げて、途方にくれていました。

「僕が持ちますよ」と、彼女の手からビニール袋を奪い取ると
彼女は満面の笑みで僕に感謝の言葉を告げました。

2人で桜並木の下を歩いていると、彼女が前方を見つめて大きく手を振りました。
僕も彼女の視線の先に目をやると、犬と千種がこちらに向かってくるところでした。

それからは4人で並んで帰りました。
犬と千種は相変わらずケンカばかりして、僕と彼女はそれを見て笑っていました。

「また明日も4人でこの道を通れるのかなぁ」

彼女が小さくそう呟いたので、僕が彼女の肩を抱いて

「5年後も10年後も、ずっと4人並んで歩けますよ」

と言うと、
彼女は泣きそうな顔で笑いました。



こんな汚れた世界の中で唯一美しいと思えるこの場所だけは
僕が必ず守り抜くと、

そう誓いました。




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