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『錆に耀くもの』

幾度指折り数えただろうか
薄い霧 街を流れ 息を止めて
朱く染まりだしたその日から

繊細すぎるその雨は 地に降りることもできぬ
時を失くした街をフワフワ流れ
やがて浮上する凝血たち

いつしか喉まで錆つかせながら
静かに流れる少女の祈りは血にまみれ
悲痛に響く叫びと似る

晴れぬ霧 錆の海
罪を背負い旅立った少年に赦しを乞う小さき謡姫
醜い大人から少女を救った幼き勇士はもういない

幾度指折り数えただろうか
未だ止まぬ 美しすぎるレクイエム
世界を壊す 清き讃美歌

いつか世界が霧散を迎えても
錆ついた謠姫の躯は
勇士のために祈り続ける

幾度も指折り数えながら

※拍手ありがとうございました
このSSは今年度の文芸誌に載せる予定です



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