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侍戦隊シンケンジャー
 第八幕 花嫁神隠 −ifバージョン−



外道衆による花嫁誘拐が続発していた。
花嫁たちが生きたままさらわれていることから、シンケンジャーは花嫁たちが三途の川ではない別の場所に囚われていると推測。
花嫁たちが囚われている場所を特定する為、偽りの挙式を行いシンケンピンク白石茉子(しらいし まこ)を外道衆に誘拐させることに成功したが…


「よく来た ンフフフ」

さらわれてきた花嫁、白石茉子を見下し、薄皮太夫が不敵な笑みを浮かべる。

(こいつは昔の資料にあった薄皮太夫… ドウコクの側近が絡んでたなんて…)

「さて、どう歓迎して差し上げようか… なぁ、シンケンジャー!」

(エッ!)

正体がバレていることを知った茉子はショドウフォンを掴んだ。
だが、その行動を予測していた薄皮太夫に腕をきめられ、ショドウフォンを奪われてしまう。

「わちきを騙したつもりだろうが、そう甘くはない お前たちがコソコソしてること、気づかないと思ったか」
「クッ!」
「ンフフ 仲間に連絡させてやるさ  ただし、わちきの言うとおりの事をね」
「誰がおまえの言うとおりになど!」
「ンフフフ 花嫁がどうなってもいいと?」
「クッ…卑怯な…」
「ンフフフ お前はわちきの言うとおりにするしかないのさ」

そうこうしているとナナシたちが花嫁を連れ戻り、巨大な繭の中に押し入れた。

「ンフフ 本物の花嫁は頂いたよ」

薄皮太夫はこれ見よがしに、手に持っていた黒と紅の刀を柱に立掛けると、花嫁たちを閉じ込めている繭から紡ぎ出される糸で織られて行く打掛に頬擦りする。

「これを着れば、昔のように…」

うっとり酔いしれている薄皮太夫を睨みながら、茉子はチャンスを窺った。

(わたしにウソの連絡させて、丈瑠たちをワナにかけるつもりだろうけど…)

薄皮太夫に気取られないよう堂内を見渡す茉子の眼が柱に立掛けられた刀で止まる。

(アレを奪うしか…)

漆黒の鞘に血のような紅の蛇が巻きついた彫刻が施された刀は、ただならぬ妖しい気配を放っている。

(不気味な刀だけど… ショドウフォンを取り返す為には…)

チラリと自分の腕を掴んでいるナナシを見やると、ナナシは打掛に頬擦りしている薄皮太夫に気が行っていた。

(いまなら!)「ハッ!」

茉子はナナシのスネを蹴り、怯んだ隙に体当たりして手を振り解くと、一気に柱に駆け寄り刀を奪った。

「薄皮太夫! 誘拐した花嫁たちを帰してもらうわ!  それとショドウフォンもね!」

素早く刀を抜き、切っ先を薄皮太夫に向ける。

「ンフフッ やれるものならやってみなさい」

余裕の笑みを口元に浮かべる薄皮太夫。
その余裕が茉子には合点がいかなかった。

(何か、何かある… まさかこうなることを見越して…)

「ンフフ 面白いように、わちきが用意したワナに引っ掛かってくれる…」
「なに! それはどう言う…エッ…」

茉子は薄皮太夫に向けた刀を構え直そうとしたが、腕が思うよう動かせなかった。
それどころか、体が金縛りにあったように動かなかった。

「か…体が…動かない…」

どうにか動かすことができる目を手元に向けると、刀から放たれる邪悪な気が黒い蛇のように、茉子の体に絡みついていた。

「こ…これは…」
「ンフフフ 妖刀紅大蛇」
「…くれない…おろち…」

恐怖に顔が引き攣りだした茉子の着物が黒ずみ、ボロボロ崩れ落ちる。
茉子は握り締めた刀を手放したかったが体はピクリとも動かず、ただ黒い蛇のような邪気に体が覆われて行くのを見ていることしか出来ない。

「ンフフフ それを抜いた者は刀に憑りつかれアヤカシとなる」
「なっ、なんですって!!」
「ンフフフ アヤカシとなったお前は、わちきの意のまま…」
「ふ、ふざけないで!! こんな物に、こんな刀に憑りつかれたりしない!」

自分の失態とすべて思いのままと言わんばかりにあざ笑う薄皮太夫に憤るが、体を覆い尽くした黒い邪気は首から下の全てを覆う漆黒のスーツのように変化し、茉子の体にピタリと貼りつき、きつく絞めつける。

「ぐっ…うぐっ!…」

刀を構えていた手が力なくダラリと下がり、黒いツルツルした体の表面がキメ細かいウロコ様に変わると、手足の先に銀色の鋭く尖った爪が形成された。
そして体中が引き裂かれるような激痛と頭の中を掻き回されるような不快感が茉子を襲う。

「ウッ、ぐッ… イッ… キャァァァァッ!」

目を見開き、大きな叫び声を上げて天を仰いだ茉子の眼が黒く濁る。

「ウッ…ウゥ… は、入って…くるな…   ヤだ… はいって…こない……で…」

黒い濁りが全体に広がると中心に金色が宿り、それは縦長の細い瞳に変化した。

「ンフフッ シンケンジャーと言えども、その妖刀の邪気から逃れることは…」

天を仰いでいた茉子の顔が正面に向けられ、抜いた刀が鞘に戻されると今度は紅い邪気がスルスルと茉子の体に巻きついて行く。
右足、腰、胸、左腕に巻きついた邪気が紅い甲冑に変わると、紅い邪気は茉子の頭部を覆う。
頭を覆った邪気の中に黒と紅の雷撃が集中し、茉子の顔は蛇の仮面を着けたように、顔の下半分以外の全てが紅の兜で覆われ、人の姿のまま残された口元の肌も青白く変色し、銀の牙が唇の隙間から現れた。

「ンフフフ アヤカシになった気分はどう?」
「ンッ…ングッ……」

微かに残された人として意識が、茉子に最後の抵抗をさせているのか口元が苦悶に歪む。

「ンフフフ…」

薄皮太夫は妖しく微笑みながら自分の唇を小指でなぞり、その指で茉子の唇をなぞる。
すると茉子の唇が薄皮太夫と同じ青の口紅をひいたように妖艶に変わった。

「アァッ…」

小さく声を漏らした茉子の、仮面の目が紅の妖しい輝きを宿す。

「ンフフッ 気分はどう?」
「…ハイ…とても…イイきもちです…」

茉子は薄皮太夫の足元に跪き頭を垂れた。

「ンフフフ 紅大蛇、わちきの部下として働いてもらう」
「ハイ かしこまりました 薄皮太夫様  その証として…」

立ち上がった茉子が繭の前まで移動すると刀を抜く。

「ンフフフ 内掛けはシンケンジャーを討ち果たした後に…」
「ははッ!」

薄皮太夫の許しを得た茉子は小さく頷き、繭に刀を突き入れると残忍な笑みを浮かべた。
そして茉子は薄皮太夫からショドウフォンを受け取ると…

「丈瑠、花嫁たちが捕らえられている場所がわかったわ 場所は…」



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