ご来訪ありがとうございました!ぶちゅっ
現在SSは3種類です。

以下慎吾視点の桐青レンアイ未満です。


■■ かけらのこころ ■■


「おい、りーおーコレもな!!」

ぽいぽいとユニフォームやら靴下やらシャツやらが飛んでくる。

「はいはい、はいー!もー準さん投げないでよ〜!! 集めるの大変なんだからさー」
「ハイは1回だろ〜」
「知らないよ、もう!」


 プンスカ怒る色素の薄いふわふわ頭などお構いなしに、いつものごとく相手限定の
好き放題。
なんのかんの文句を言いながら好き放題を甘やかしているアイツも悪い、という事に
本人は気づいちゃいない。

 桐青野球部は監督の恐怖政治が徹底していて、控えもレギュラーも関係なく、その
日カントクのお眼鏡にかなった失敗をした者、または気合の入ってない者が罰片付け
をくらうという燦然と輝く容赦なき鉄のルールが存在する。

 本日監督のお目に留まりましたのは、桐青のシンカーを誇るスリークォーター投手
2年4組 ツンデレ高瀬準太と、その舎弟にして控え捕手のお馬鹿クォーター 1年4
組 準さんまっしぐらの仲沢利央の2人。

「もーなんで今日に限っておれらなの〜、それも準さんと一緒なんてサイアクー」
「利央のクセにナマイキなんだよ、お前」
「準さん、だって何にもしないじゃんかよ〜」

ナマイキな口をむにぃ〜と両側からひっぱられる。

「準は、ふぁんほ、ひろい〜」
「ナニ言ってんだか分かんねぇよ」



「お前らいいかげんにしろよ〜。オレは帰りたいんだからな!」

「ええ〜だって慎吾さんお好み焼き奢ってくれるって言ったよ?」
「罰片付けくらうなんて想定外なんだよ!2人で遊んでないでとっとと、片せ。」
「ふぁ〜い!」

 やる気のない声がシンクロして部室に響く。
昨日の罰片付けで利央がボールを磨ききってしまったが為に、よりによって今日は
前日の練習試合で使ったレギュラーのユニフォームの洗濯だ・・・・・・・・一体いつまで
かかる事やら・・・もう6時だよ、と時計を見る。

 学校中が休みの今日もオレ達は朝も早くから野球三昧だ。
 試験休みとはいえ甲子園を目指す高校球児に休みなどない。
ついでに受験生にも以下同文。

「うっわ、ねぇ、このドロドロのも一緒に洗濯機に入れるの〜?!」
「メンドクセーから、一緒でいいんじゃね?」
「ええ〜っっ!!」
「だって時間かかっちゃうだろ〜」
「でもナンカてーこー感じる〜」

「あ〜も〜オマエ等!! そのユニフォームは恐れ多くも逆転エンドランかましたオレ
のユニフォームだろ!!崇めろ!ひれ伏せ!ズが高い!!」
「わあ〜慎吾さん、さすがぁ!でもスライディングすげーカッコでしたよねー」
 
 憎まれ口をきく利央に天誅をくれるべく一歩踏み出して手を伸ばしたら、足元に散乱
するユニフォームをよけた準太の脚に引っかかりコケた。
焦って手近な準太に掴まったつもりが、体勢の悪かった準太も足元の洗濯の山にたたら
を踏む。それに手を差し出した利央を巻き込んでオレ達はダンゴになって派手にスッ転
んだ。


洗濯の山の上だったから転んだ自体は何でもなかったが、オレの上に2人のっかってる
よ〜!!

「お前ら、のけ〜重てぇ〜」

 準太の上に倒れこんだ利央がものすごい勢いで跳び退いたのに驚いて二人を見る。
 いっくら何でもイキオイよ過ぎじゃね??
跳び退いた拍子にベンチにスネをぶつけた利央が声もなくうずくまるが、耳どころか首
まで赤い。苦しさに腹を押さえながら一体なんだと準太を見たらこっちも硬直したまま
熟れすぎたトマトのような状態だ。
 それに何事かと見入ってしまう。??ナンダイッタイ?

「こら!お前らいつまで遊んでるんだよ、慎吾まで!置いて帰るぞ!!」
「か、和さん!」
「や、和己、これにはワケが!!」
「いっターっっ!お、れは、悪くないっ・・・・です!」

まったくもってナイスタイミングに和己が入ってきた。
 床に散乱する汗と泥だらけのユニフォームまみれのオレ達は、結局なぜかオレまで和己
に怒られ一緒に洗濯をする破目に陥った
・・・・・・・・だからこいつらに関っちゃいけないんだよ!



 その後のお好み焼き屋でも、妙にギクシャクする利央と準太に、オレも和己も首を傾げる
より他ない。
 2人の様子は明らかにヘンだ。
 本日のお好み焼き奉行が焼けたお好み焼きを取り分けてる横で、ジュージュー音のする豚たま
をぺしぺしと叩きながら、手っ取り早くアタマに浮かんだ情景を何気なく聞いてみた。

「なんだよお前等、ちゅーでもしちゃったの?」
ホントになんの悪気もなく聞いたオレに、準太がお好み焼きを喉に詰まらせ、利央は動揺も
あからさまに口に運んでいたお好み焼きを制服に落とした。

「をぁぁぁーっ、ソースがっっ!!」
「ほら利央!準太はコレ飲め!」

 利央におしぼりを渡し、コーラの入ったグラスを手渡された準太はなおも咽ている。
利央は真っ赤な顔から湯気まで出して反論に入った。

「ほ、頬かすっただけだよ!! く、口じゃないからね〜っっ」
「〜っっっ!」
準太の左手がスパーンという音も小気味よく、利央の後頭部を狙い打つ。

「った、痛いよ!準さんっっ!」
「オマエナァ〜っっっ!」
「だっ、わざとじゃないよ!! 倒れそうになった準さんを助けようとして、」
「一緒に倒れたらイミねー!」




「あそこまで動揺してたんだからホントは口じゃね?」

 騒ぐ2人を尻目に1人ごちるオレの呟きを聞き取った和己が笑っている。
正面に座った二人はいつもの口ゲンカに発展してオレ達の会話は耳に届いていない。

「りおーはとっさに嘘吐くほど器用じゃないからなぁ〜。ま、口の端ぎりぎり?ってトコ
だろ」
「あ、ソレいい線いってるな、きっと。これで恋とかはじまっちゃうんじゃねー?」
「それ面白いな!慎吾は目のつけどころ違うよなぁ〜」

 目の前の事態を余り気にしていないのか、単なるハズミくらいにしか思ってないのか、
桐青の要は今日も動じる気配はない。


「お前ってホント大物だよな」
「いやいや、お前だって、大物は。」

 知らぬが仏、とはよく言ったものだと思う。
コイツもやっぱり、野球バカ一代!ってヤツだなと心の中で溜息を吐いた。

 利央の気持ちが通じるのはいつの日かね?と呟いたオレに、おれ等の卒業後
かな〜とのんびりと和己が返してきた。

「うらやましい話だな。」
思わず呟いたのに、オマエもモテルだろ?その気になればスグじゃないのか?と
悪気なく返してくる。



 かくして目の前の春にはまだ遠い2人と、兆しさえも見えないオレらの晩春の
ハプニング。



                                12th Dec 2007. すすき


◇◇お題配布元  「変わっているお題配布所」さまよりお借りいたしました♪ ◇◇
          http://www.geocities.jp/pograffitti/



ぷくっ!
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