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遊郭パラレルの幸村+佐助です。


紅月一夜(1)







「そんな所で何してるんですか」

庭に面した縁側に寝転び、何をする訳でもなく土をついばむ雀を眺めていた俺を呼ぶ声があった。

「…何用だ」

「最初に聞いたのは俺。なぁ、何してるのってば」

「見て分からぬか、佐助」

「皆が忙しく立ち働いてる昼間っから呆けてる」

容赦なく言ったあと、十年近くこの家に奉公している佐助は、俺の頭のすぐ横に腰を下ろした。
俺に対する遠慮も何もあったものでない彼の軽口は普段ならば小気味良いのだが、生憎と今は誰と話すのも煩わしい。

「当たりだろ」

「あぁそうだ。そうだから、早く用を言って俺を一人にしてくれぬか」

佐助が覗き込んでくるのを見上げ、露骨に煙たがると彼の細い眉がキュッと寄った。

「郭通いを止めたかと思ったら今度は怠け癖が付いたのか」

郭。
最も聞きたくない言葉が耳に入り、鉛を飲み込んだように胸が重くなる。
顔を歪めて黙りこくる俺をそろそろ異常だと思い始めたのか、佐助が諭すように声音を和らげた。

「もうすぐ所帯を持つ人が我儘ばかり通してちゃいけないよ」






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