美術の授業は楽でいい。あっという間の2時間が終わる。掃除が終われば次は部活だ。


「におー。行こー。」
「待ちんしゃい。もうちょっとでいい緑色が仕上がるけぇ。」
「んなの適当でいいって。おっ、うまいうまい。お前絵だけはうまいよな。」
「絵だけって何。失礼な子じゃね。」
「ははは。なぁーもう教室戻ろうぜ。洗い場混むじゃん。」
「んなとこ行かんであそこ使えばいいじゃろ。誰も居らせんわ。」
「あー水飲み場。」

黄色い水入れに4本の筆を突っ込むと片方の手でパレットを持った。画板は俺の分まで仁王が持ってくれる。
俺たちの部室のすぐ近くにある水飲み場にたどり着くころには足元に色鮮やかな水滴が続いていた。
水しぶきがかからないよう微弱に絞った蛇口に水彩絵の具でカラフルに染まった筆をぐいとつっこむ。

「おい、アホ、ブン太。そこ部活んとき俺らが使う場所。その蛇口どうするん。」
「あー?いいじゃん真田に使わせりゃ。」
「まちがって幸村が使ったら?」
「だいじょーぶ、幸村くんには俺がついてるから!」
「(は?どうゆう意味?)つーかなんちゅう洗い方しとるん。ちゃんと手で洗いー。」
「えーやだ汚れんじゃん。それにこっちのがきれいに落ちる気しねぇ?」
「しない。お前さんほんとにB型じゃの。」
「おめーなんてABじゃねーか。変人。」
「あ、世界のAB型を敵に回したな。」
「いいよ。AB型の味方なんか仁王だけで。」
「…俺は味方なん?」
「うん。何、不満?」
「いや。」


そんなことない、と仁王はいつもの薄い笑顔で俺にキスをした。
蛇口からふき出す水の音が次第に遠のく。心臓がうるさくて、そりゃもううるさくって。



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