昏い昏い闇の中

差し出された手







きみのて。







「髪切ってくんない?」


唐突に。

特別な日でも何でもない、極々普通の平日の昼下がり。
唐突に悟空が云ってきた。


「あ。もしかして三蔵長い方が好きだったりする?」
「別に長かろうが短かろうがお前はお前だろ」


そう云ってやれば至極嬉しそうに破顔した。

俺の好きな顔だった。


「だってもう要らねぇから」


まるで宝物に触れるように優しく優しく俺の手を一回り小さな両手で包み込んで、


「俺にはもうこの手があるから」


幸せそうに微笑んだ。


「これはずっと俺を守ってくれてたんだ」


己の艶やかな髪を愛しそうに撫でながら、ゆっくりと告げる。


夏の陽射しから、
冬の風から、
守ってくれてたんだ。


でも今は――…


手を引いて木陰に連れてってくれる手が在る。
包み込んで暖めてくれる手が在る。


だから必要無いのだ、と――…


「俺、この手で…三蔵の手で切ってほしい」



其の日、悟空の髪はバッサリと切られた。

孤独から連れ出してくれた…、
悟空が取った其の手によって―――…





*EnD*

拍手ありがとうございましたvv

上記ミニ小説はバッサリ髪を切った友達が「あたしを守ってくれる髪がなくなった」とか言ってて思い付き。
夏は焼けしないし、冬はあったかいじゃん!って云ってたんです(笑)



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