くらやみ1【ナイフと少女】







僕の名前は相馬アヤ。

自分で言うのも悲しくなるけど極平凡に、本当に極平凡に人生を送ってきた

小学校、中学校、高校と無事に卒業して今年の春無事に大学に入学して、中々可愛い彼女がいて・・・

それで、大変だけど楽しく大学生活過ごしてて・・・

なのになんで・・・

なんで、僕はこんな・・・



「ぐっ、う・・・」



目の前には暗闇でも映える自然な、染めていないプラチナブロンドにカラーコンタクトレンズなんて使ってない澄んだ本物のブルーアイズ

見たところ十歳前後の幼い少女。

可愛らしい、それこそ西洋人形のような見事な姿に似つかわしくない程乱雑に僕の腹部に鋭いナニかを突き立てる

ズブリ、と肉を裂く嫌な音がする。

腹が熱い。目の前がふらついていて視線が定まらない。

心なしか足取りもおぼつかなくなってきたようだ

時間はどれほど経過したのだろうか、精一杯に視線を下へ落とせば血が服にしみている

いやそれどころじゃない。

小さな血溜まりを作っていた。気がつかないうちに長く時間が経ってしまったのだろうか?

それとも指された箇所が悪くて流れ出す量が尋常じゃないのか・・・

そんな事は如何でもいい。

今確かにいえるのは何故か見知らぬ少女に刺されたという事、自分が死にそうな事。

そんな考えをめぐらしている間も少女はまだ僕の腹部に身体を寄せていて、やはりその小さなてには大振りの包丁が握られている



「・・・くるしいの?」

「がはっ・・・うっ」



刃が体内から抜ける。
初めて喋った少女の声色は感情が無いようでいてしっかりと楽しげな色を含ませている。

だって・・・

口元が笑っている

そんな事が判ってもどうしようもない、少女の問いにも答えられる余裕なんて無い

刺されるってことは、こんなに痛いことなのか・・・

僕は、

そのまま、

不思議だけれど、

まどろむように意識を失った







「おはよ、アヤ君。」

「へ・・・?」



彼女の顔、間抜け僕の声、何もおかしいところなんて無い日常の風景

辺りを見渡してもおかしいところなんてありはしない。



「どーしたの?」



夢だったんだ。そう考えれば不思議も無い。

不思議と笑いが溢れてくる

クスクス笑ってたら彼女に笑われた。何でも無いと返して鈍く痛む腹を擦る

鈍く・・・痛む、腹を・・・

何で痛むんだ?

明らかに笑いすぎとは違う痛み。腹を直に触れば引き攣ったような妙な手触りの新しく組織された皮膚

ぐらりと眩暈がした。貧血にも似た眩暈。

眩暈・・・



・・・アレは夢ではなかったのかもしれない



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