■月曜日 (?×獄寺) 手に何か硬いモノが食い込んでいる感覚で、急に意識が浮上した。 知らない間に眠って居たのだろう、身体はベッドに横たわっているようだが、手にはしっかりとシャープペンシルが握りしめられていた。 ぼんやりと、朝か、と考える。 暖かい布団に包まれているのが心地よくて、一度浮き上がった意識を思わずシャープペンシルと共に手放しかけて、 「……あ!?」 早朝にしては明るすぎる太陽の光と楽しげな鳥の鳴き声に、上半身をバネよりも素早く引き起こす。 ぎぎ、と軋む音を響かせて、祈るような気持ちを込めて、込めて、込めて、ベッドヘッドのデジタル時計を振り向いたのに。 「あ…あ、あぁあっ、月曜はバカ本が朝練で居ねーから十代目と二人っきりでゆっくり出来るっつーのに、オレの馬鹿! 畜生、畜生!」 初恋中の女子中学生のような台詞を叫びつつ、枕を殴る。ほぼ毎週犠牲になっている枕はそろそろ綿が偏って凹んできていた。 しかし、殴る手が突然止まる。左右に跳ねた髪の毛もそのままに、獄寺はゆっくりと二回瞬く。 「……オレ、何でベッドに寝てるんだ…?」 ベッドで寝た記憶が綺麗に抜け落ちている。いや、その前に、眠りに至った記憶すらない。 釈然としないものを抱えつつ、獄寺は取り敢えず乱れたベッドから降り立つ。すると、いつも教科書と火薬で散乱している筈のテーブルの端だけが不自然に綺麗になっている事に気付く。眉を顰めて近寄ってみれば、ノートの端を千切ったような不格好な紙がその部分に置いてあった。 「何だコレ、きったねー字…“先行きます。朝飯作っといたから食べて下さい。”…!?」 はっ、として獄寺は急いで簡易キッチンへと向かう。確かに狭いシンクの隣にはスクランブルエッグとタコ型ウインナーが添えられたサラダに、タマネギとピーマンの入ったスープが置いてある。そのささやかな料理と走り書きメモを交互に見比べて、獄寺は眉の皺を深くする。 「…んな暇あんなら起こせっつーの…」 もしかしたら、ベッドに運んでくれたのもこの、ご丁寧に料理したフライパンその他を綺麗に洗って出掛けていった男の仕業かも知れない。そんな無防備な姿を晒してしまったなどとは考えたくはないが。 「……勿体ねーからな。だ、大体、オレの財布から出てんだし…」 皿に掛けられたラップを外しながら、ぶつぶつと呟く。その口元が小さく緩んでいる事に、本人は全く気が付いていなかった。 (Next:綱吉→獄寺)
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