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※『黒執事』の兄派路です。
こちらはセバスチャン×シエルとなっております。

「セバスチャン」
 背中を向けて寝室から出て行こうとする黒服の男を、僕はベッドの中から呼び止めた。
(くそっ。体が熱くて……疼いて眠れない。こいつだけには頼りたくなかったけど……。でも、今の僕を満たすことは、こいつにしか……)
 くるりと振り返った男は、白皙の美貌にいとも優美な笑みを浮かべてみせた。
「なんですか? ぼっちゃん」
 用件どころか、こちらの焦燥までとっくに見抜いているくせに、このしたり顔にめちゃくちゃ腹が立つ。
(ちくしょう……嫌なのに、どうしてこの体は……)
 無意識に乾ききった唇を物欲しそうに舌舐めずりしていたらしい。淫靡に口元を綻ばせた男に気づいて、はっとして唇を噛みしめた。
(悔しい……)
 こんな自分が、たまらなくいとわしかった。紅潮していく頬の色さえ忌々しいのに、あさましく何かを期待するみたいに鼓動が高まっていく。
「こっちにこい」
「イエス マイ ロード」
 わざとらしく高慢な命令口調にも、男はその長身でいやみなほど優雅に会釈して、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
 思わず、ごくりと喉が鳴った。
 クスリと、男の形のいい唇から低い失笑が聞こえて、僕は反射的にアッパーシーツの下の身を固くした。
 見下ろしてくる闇色の瞳はぞくぞくするほど淫らで、そのくせこの男の持つ不思議な気品を決して損なうことはない。
 この男が並みの情欲など超越した人外の存在であることを、嫌でも意識させる。
「なにも恥じ入ることなどないと、お教えしましたよ。愚かな人間の……それは当然の衝動です。どんなに嫌でも、あなたはその哀れな肉の欲求から逃れられない。小さくて弱い、わたしの……」
「うるさいっ! ごたくはいいから、さっさとしろ」
 もう待てないと直截にせがんだのは、内側から身を灼く炎のせいか、それとも男の視線と言霊にとらわれるのが怖かったのだろうか。
「やれやれ……ムードもへったくれもありませんね。それに、それが人にものを頼む時の態度ですか?」
「人じゃないだろうっ、おまえはっ……」
 悪魔のくせにと、ついかーっとなって罵り声を上げると、ふいに男の表情が危険なものへと一変した。
「もちろん……しかし、わたしにおねだりする時のセリフは教えましたね」
「あんなの……」
 怒りもせずに、自分から欲しいものをねだってみせろと促されて、またあんなことを言わされるのかと屈辱に唇が微かに震えた。
「ぼっちゃん?」
「プリーズ……僕をめちゃくちゃに犯してください」
 たどたどしく教えたれた言葉をそらんじた僕に、男は機嫌のいいガヴァネスみたいに微笑みかける。
「よろしいですよ。あなたの望みのままに……」
 黒い影が近づいてくる。そう思ったせつな、唯一灯っていた枕元の燭台の明かりがふっと消えた。
 冷たい腕が、僕の背中を抱きしめる。
 瞬きする間に、僕の体を包んでいたシルクの寝巻きは掻き消え、男の纏っていた黒服も脱ぎ捨てられている。
 いや、こいつの着ている服など、もともとこの世のものではないのかもしれないけど。
「あ……」
 いきなり、じかに触れ合った素肌に不覚にも驚きの声を洩らすと、あいつは口に出さなかった理由まで察したように小さく笑った。
「ファントムハイヴ家の執事たるもの、このぐらいできなくてどうしますか」
「嫌な特技だな」
 喜びそうなのは好色なばばあくらいだと皮肉に呟いた僕の耳元に、それを後悔させるような冷酷な響きが届く。
「あんまり悪態ばかりついていると、苛めますよ。まあ、小さくて愚かなあなたが、そうやって虚勢を張っているのも可愛いものですが」
「あうっ!」
 お仕置きみたいに、すでにあさましく昂ったものをいきなりつかまれて、僕は鋭い悲鳴を上げた。
「おや? ……あなたはよくよく意地っ張りな方ですね。
よくこんなになるまで我慢したものだ。悪魔に抱かれるのは、そんなにお嫌でしたか?」
「うるさいっ……早くっ、セバスチャンっ!」
「いいですよ。うんと虐めて差し上げます。乱暴に犯されるのが、あなたのお好みでしょう?」
 闇にいっそうよく通る男の声が、期待と不安に震える僕の胸を貫いた。



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