Thanks For Clap

雪や、こんこん

積った雪は、あくまで白かった。
誰も踏んでいない雪面は、あまりにも滑らかで、最初の足跡をつけるのが躊躇われる。

「寒いと思ってたら」
吐く息が白かった。かごめから借りたマフラーがあたたかい。
「雨が夜中に雪になったのね」
マフラー、手袋、耳あて、重装備のかごめが横から顔を出す。
「かごめちゃん」
「おはよ、珊瑚ちゃん」
うきうきした様子で七宝を抱きかかえている。
「雲母、どうする?」
指で顎を撫でてやると、雲母は首を傾げた。
そのまま躊躇なく雪原へダイブする。
「あ……」
とことこと歩いた雲母の後ろに足跡が連なって、振り返った赤目が珊瑚やかごめを呼んでいる。
「ええと。草履だし、ね? 雲母」
冷たいのは勘弁してくれ、と雲母に向かって珊瑚は苦笑した。

「えいっ」

「うわびっくりし!」

驚き過ぎると無感情で意味不明な声が出る。
自分でも馬鹿みたいだと思って珊瑚は吹きだした。
かごめに背中を押されて、雪に突っ込んだのだ。

「やったな~」
悪戯っぽく笑うかごめに、同じく笑いかけて、珊瑚はかごめの腕を強く引いた。
「ほら!」

七宝と一緒にかごめも雪に埋もれる。

「あー、びっしょびしょ! もう、おすわり!」
「犬夜叉じゃないから、かごめちゃん」
効かないよ、と腹を抱えて言って、変化した雲母の方へ歩き出す。

「なら、くらえっ!」
「あだっ」
雪玉が直撃した。雲母は穏やかにその様子を見守っている。
びっくりして目を丸くしている珊瑚を見て、かごめが笑う。
雪まみれのくせして一向に気にしていない。

「……そっちがその気ならこっちだって、やるんだからね!」

雪に埋もれた草履の足先が冷たいとか、小袖がぐしょぐしょとか、もうどうでも良かった。
ここまで濡れたら、これ以上濡れたって一緒だ。

「待って、あっちに投げよ」
雲母を楯にして雪玉を投げようとしていた珊瑚に、かごめはそっと自分の背後を指さした。
見れば男二人が様子を見ている。
「うん。分かった」
「七宝ちゃんも」
「おらもか」
「せーの……」

かごめの掛け声で三人で犬夜叉と弥勒に向って投げた。
ひょいとかわした弥勒とは別に、犬夜叉にはもろに一玉が直撃。

怒った彼の声に続いて、否応なしに女対男の雪合戦が始まった。


fin.

あとがき


雪が積もったから雪の話を、と思って書きました。
あほうし、ではありませんよ。
ありがちなネタですけれど、ありがちだからこそ魅力的です。
それでは、ここまで読んで下さってありがとうございました。

2010.02.07 漆間 周



名前、URLは無記入でも構いません。感想など一言でもいただけたらとても励みになりますv
お名前 URL
メッセージ
あと1000文字。お名前、URLは未記入可。