【好きだから一緒に。】





 フラノールの夜は冷える。

 判りきっていたことだが、暖炉の火を消して一時間もすると部屋はすっかり冷え込んでしまう。本当は雪国ならではの特殊な造りで熱を部屋に溜め込みやすくなっているのだが、しかし今夜は五十年に一度の大寒波、特殊な造りだけでは購えない程の寒さが街中を包み込んでいた。

 だが吹雪に足止めを食らってしまったロイド達は仕方なく宿をとったのだが………

 寒さが苦手なリーガルは就寝ギリギリまで暖炉の傍を離れなかったが、ベッドに潜り込むなり冷気に凍えてしまった。それでも数分もすれば体温で温くなるだろう、なんて考えながら丸まっていたのだが。ふと、そこに、人の気配が近付いた―――驚いて顔を上げると同時、ソレは突然足下からベッドにもぐりこんできた。

「うわっ、なんだっ?」

「っへへー、一緒に寝ようぜリーガル」

 と枷をはめた腕の中に潜り込んで顔を出したのは、ロイド。

「ロイドか……どうした、寒いか」

「ああ。寒くて眠れねーんだよ」

「そうか。私も一人では寒くて眠れなかったのだ。二人なら少しは温かくなろう」

 とリーガルは、いつもの笑みを浮かべる。

 ロイドはその笑みをきょとんと見詰め、それから、何故か嬉しそうに笑ってリーガルに抱きついた。

「ロ、ロイドっ? どうしたのだ一体」

「ん。なんかさ、リーガルの笑顔って好きだなぁって思って」

「………」

 人から笑顔を好きといわれると、妙に照れてしまう。

 リーガル恥かしさに頬を染めて、それを見てロイドは更に嬉しそうに笑うのだった。

「リーガル。な、な、ぎゅーってしてくれよ。ぎゅーって」

「ぎゅ、ぎゅー?」

「ぎゅーって。ほら」

「あ、ああ。わかった」

 リーガルは、言われたとおり、ロイドをぎゅーっと抱きしめた。

「………」

 温かい。

 というか、気持ちいい。

 子供は体温が高いというが、十七歳の彼も体温が高いようだった。

 いつの間にか布団も温かくなっていた。恐らくこれは二人分の体温に加えてロイドの言葉と彼を抱きしめることへの照れくささに自らの体温が急上昇したせいでもあるのだろう。

「ロイド。お前は案外、小さいのだな」

「そうか? リーガルは大きいよな」

「そうか。大きいと、やはり温かいか」

「……。別に大きいからってリーガル選んだワケじゃねえぞ?」

 と、ちょっと不満げな顔してロイド。

「なに?」

「だってよ。温まるならやっぱ好きな奴と一緒に寝たいじゃん」

 ロイドは恥かしげもなく満面の笑みで言う。

「そ、そうか。だが他の者の前ではあまりそういうことは口にしない方が」

「へ? なんでだよ。まあ俺が一緒に寝たいのはリーガルだけだから別にいいんだけどさ」

「だからロイド」

「なあ、リーガル」

 ロイドは鼻先がつく程リーガルに顔を近づけて、嬉しそうな微笑を浮べて彼の瞳を見つめる。

 その行為にリーガルは戸惑い、驚き、恥かしがって頬を真赤に染めた。

「俺さ、お前が好きだよ」

「………」

「スゲー好き。だから一緒に寝たいし、この旅が終ってもずっと一緒にいたい」

「ロ、ロイド……? どうしたのだ急に」

「だめなのか? 俺、十年後もリーガルと一緒にいたい」

 不安げな顔でロイドは言う。

 なんというか、この言葉はまるでそう―――プロポーズである。

「じゅ、十年後も?」

「この旅が終れば俺達はそれぞれの生活に戻ってく。寂しいことだけど、でも俺達仲間の心はいつも繋がってるって知ってるよ。でもさ、アンタと離れるのだけはやっぱ耐えられないんだ」

「………」

「好きなんだよな、本当。だから十年後も二十年後もずっと傍にいたいし、その時もこうして一緒に寝ていられたらいいなって思うんだ。迷惑……かな、やっぱ」

 ロイドは不安と寂しさの混ざり合った複雑な表情で、俯く。

「いや。嬉しいな。ありがとう、ロイド」

「ほ、本当かっ?」

「ああ。誰かにそう言ってもらえるのは、本当に嬉しいことだ」

「っやったぁっ。好きだぜリーガルッッ」

 ロイドは興奮気味にリーガルの頭を抱きこみ、何度も乱暴に髪をなでる。そして額にキスをして、驚く彼に構わず頬にキスをする

「お、おいロイド。恥かしいっ」

「大丈夫だって、誰も見てないし。愛情表現だと思ってくれよ」

「っ………」

 これが彼なりの愛情表現、そう思って受け止めればいい。

 けして嫌なわけではないし、むしろ嬉しいかもしれない。でも恥かしいし、寒さなど忘れるほどに顔が熱って仕方ない。

「ロ、ロイっ」

 名を呼ぼうとした瞬間・ロイドの唇がリーガルの唇を塞ぎ、しかも深く舌を侵入させてきた。

「ふっ……うっ……」

 やめて欲しい。

 恥かしい。

 必死の思いでロイドの肩を掴むと、ようやく、彼は顔を離してくれた。

 そして満面の笑みを浮かべて、

「んじゃ、寝ようかリーガル」

「あ、ああ」

 過剰な愛情表現だな。

 リーガルは彼の将来が不安になり、明日にでもリフィルに相談しようと思った。そんな彼の心配など知らず、ロイドは一人満足気な顔してリーガルに抱きつき、眠りにつくのだった。そんな彼の幸せそうな寝顔を見、リーガルはふっと優しい笑みを漏らすのだった。

「おやすみ、ロイド。そして十年後も……きっと私は、同じ言葉を囁くだろう」





 その頃、部屋の外では……

 ひそかにゼロスが苦笑い浮べて覗いていたりする。

「あーあー、お互い鈍感すぎだろ」

 呟き、肩を落とす。

 ロイドは自分の気持ちに気づかずリーガルに迫るし、リーガルはリーガルで彼の気持ちに気づかず戸惑うばかり。そんな二人に進展があるのかどうか、ある意味楽しみではあるが……今はそんなことより、部屋に入りづらくて仕方がなかった。

「っつか俺様も寒い。一緒に寝てーなぁ」

 なんて無駄な呟きの後、彼はしいなの部屋に向って秒殺されてすごすご部屋に戻ってきて、二人で温まるリーガルとロイドを背にして一人ベッドで丸くなるのであった。



















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拍手小説第二弾。

ロイリガ小説。お互い天然だから進展ナシと思う。

恐らく十年後、彼の隣にいるのはプレセアかと(オイ

でもロイリガ好きー

天然で攻めまくり気持ち素通りでも気づかず幸せ感じてOKな関係でいて欲しい。












ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。