鬼、と。そう呼ぶに相応しい見目であった。
今更振り返るまでもない、戦場にさえ馴染まぬ奇異な色ばかりを纏った姿はその二つ名の通りであり、所作の一つとてそれに違わぬものであった(本陣に踏み込んできた時には、男の長身は既に血浸しになっていたのだ)。
「アンタが毛利元就か、」
長曾我部はそう言い、己は陣幕の内に座したまま(勿論得物は手放さずに居る)で是と答えれば、「部下の仇はとらせて貰う」と凄む。冴えた青鈍色をしている。
尚も腰を上げず、男を眺めていると、肉厚のその掌は、ぎし、と軋んだようだった。
砂利の音は二重ね在った。

破邪と刃



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