Another Life




ご注意

土方誕生日SSのはずが間に合わなくてちょこちょこアップしてく羽目になったSSです。
金魂編とバラガキ編がかかわってきてます。誕生日SSとしていいのか微妙なとこですが、
あと二・三話続きますのでのんびり待っていただければ…(すみません(汗))




Another Life 0




「出来たみてェだな」

工房の入り口に立った影に、源外は肩を跳ねさせた。
全く、ここを訪れる連中にはろくな者がいない。その代表はいわずと知れた、スクーターの修理費用を値切ろうとする男だが。隻眼の物騒な空気をした男が訪れたこともあったし、今のこの少年のように、全身で悪だくみをしていますという空気を出すものも時には訪れる。
源外が振り返ると、少年はずかずかと工房内にうず高く積み上げられたスクラップを器用によけながら入り込んできたところだった。源外は心得たもので、脇に控える。その背後から現れた、コンピューターに繋がれた「それ」――――源外が今しがた完成させたばかりの人形を見上げて、少年はにんまりと笑った。

「…あんたが何考えてるかは知らねえが…こいつを使うのは、おすすめできねェな」

相手は官憲だ、源外が口を出せることではない。そもそも源外はお尋ね者だ、指名手配もされている。
この少年が工房を訪れたときは、ついに年貢の納め時かと腹をくくったものだった。



一週間ほど前のことだったろうか。
源外の顏を見るなり、突然工房を訪れた少年はそのまだあどけない顔でにんまりと笑うと、言った。

「あんた、平賀源外だろィ」

そうしてこう続けたのだ。

「この男そっくりの人形を、作ってほしいんでさァ。…万事屋の餓鬼どもの依頼と全く同じ仕様でねィ」

差し出された写真に写った青年の顏には、見覚えがあった。
咥え煙草で機嫌悪そうにこちらを睨み付けている青年は、テレビでときどき見かける武装警察真撰組の鬼副長その人だったのである。
源外には拒否権はない。少年――――沖田は、源外が何をした人間かということを、知っているらしかった。その上で写真を押し付けていったのだ。作らなければ源外の辿る道は決まっている。
そういうわけで、つい先日、万事屋の子供たちに依頼されたのと全く同じ仕様で、その人形を作ってやったのだ。



控えめな忠告に沖田は肩をすくめると、源外を横目で見やった。

「アンタが何の心配をしてるかァしらねェが、別に俺ァこいつで何をする気もありやせんぜ?いつも激務のうちの副長がカリカリしてんのが不憫になったんで、それのサポートしてくれる人形があればと思った親切心だィ。丁度野郎の誕生日も近いしねィ」

ぺたぺたと種々のコードやらーチューブに繋がれた「人形」に触れる少年は、そんなことを言いながら、酷く物騒な微笑を浮かべているのだ。
それならあの人形に取り付けたご希望の「機能」は必要ないのではと思った源外ではあったが――――この少年相手に、口を挟めるわけもない。何しろ沖田は、源外の素性を知っているのだし、もし口を挟んだって笑い飛ばされるだけであろう。
せめて、自分の作った人形が、過日の歌舞伎町のような騒動を引き起こさないように――――
源外にできることは、そっと祈ること、それだけだったのである。






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