片道切符
「無理だって、絶対斬られる!」
「今更何言ってんでィ、男なら腹ぁ決めろ」
「私は女だっつーの!」
新撰組の屯所の昼下がり。
本日の副長様は非番にも関わらず、自室にて書類整理の真っ最中
そこから少し離れた廊下の真ん中で、私は総悟と押し問答の真っ最中
今日は隊務もそこそこに、私達は帰って来た山崎も交えて最近密かに流行っている大富豪に興じていた
新撰組には独自の内輪ルールが存在している
大富豪になった者が大貧民に何でもひとつ命令出来るという、魅力的かつ命懸けのものだった
そのルールのせいで、いつもゲームは真剣そのもの
私は運が良く、今まで一度も負けた事は無かったのだけど
今日に限って大貧民になってしまった
しかも大富豪があの総悟という絶望的な状況下で・・・
「大貧民、土方さんにキスして来い」
ドSの大富豪は青ざめる私に、無理難題な命令を下した
隊務をサボっていたのがバレるだけでも危険なのに
キスなんて、それこそ殺されかねない
「他の命令なら何だって聞くから、本気でそれだけはやめて!」
「そのお願いを聞いちゃ、罰ゲームの意味ねぇぜィ」
にやりと笑って、総悟は私の手にトランプのジョーカーを握らせた
「成功したらこのカードやるから、行ってきなせェ」
こんな物いるかぁ!
と一喝してやりたかったが、悲しいかな、次回大富豪になって総悟に仕返ししてやりたいという思いが勝ってしまう
ジョーカーは欲しい
でも命は惜しい
ジョーカーは・・・
「分かったわよ」
私はとうとう承諾してしまった
手の中には地獄への片道切符
果たして無事に帰って来ることが出来るだろうか
お題:「創作者さんに50未満のお題」
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