サイト開設5周年記念―――短編
「えっ‥と。なになに‥‥ "サイト開設5周年を記念して、皆さんに集まって貰いました。
楽しんで下さいね。"‥って、なんのコトだろう?」
テーブルにぽつんと置かれたメモを読み上げて、とらおうが一同を見渡した。
すぐ隣には、最愛の妻ビアンカが。そして自分たちの横には息子ワタルと娘ヒミコが並んでいる。
テーブルを挟んだ向こう側には、親友のヘンリー夫妻と愛息コリンズが集っていた。
「オレたちはお前に会えると聞いて、やって来たんだが。
‥お前の呼びかけじゃ、なかったのか?」
ヘンリーが溜め息混じりに確認してくる。
「ああ‥うん。ボクらも招待されたんだ。」
ね…とビアンカに目で確認すると、彼女も同意を示すよう頷く。
「不思議な招待状だったけど、嫌な感じも残ってないし、ちょっと興味あったしね。」
「‥そうですね。悪意‥のようなモノは感じられないみたいです。」
マリアがふわりと微笑むと、妻の言葉に納得したようヘンリーが頷いた。
「‥まあな。とりあえず、お前たちの元気な姿が見られたコトだしな。
こうして互いの家族が揃って顔合わせるのも、久しぶりだな。」
「うん、ホント。なんか城に戻ったら、なかなか外出させてもらえなくてさ。」
「でも、父さんは、こっそり抜け出してるよね、よく。」
ワタルがムスっと言って、側の椅子を引き、腰掛けた。
「そんなにしょっちゅうじゃないよ!?
それに‥ビアンカにはちゃんと行き先告げてから行ってるしさ。」
息子の隣に腰掛けて、父親が言い訳めかす。
「バッカだなぁ‥。親が子供に隠し事するなんて、全然普通じゃん。」
コリンズがバカにしたよう断言する。
ゴツンとヘンリーが愛息の頭に拳固を落として、彼も着席した。
それに倣うよう、ビアンカたちも席に着く。
皆が席に着いた所で、ガヤガヤと人の気配が現れた。
「よお…みんな集まってるみたいだな。」
酒が入ってるらしい瓶を抱えて、緑の髪をした青年がやって来た。
「‥君は?」
不思議顔でやって来た人たちを眺めたとらおうが、戸惑い混じりに訊ねた。
「ああ‥なんか頼まれちまってさ。食いもんいろいろ運んで来たのさ。
あ‥俺は鷹耶。あんたたちよりずっと前の時代に、面倒な冒険させられた者だ。」
「面倒な冒険だなんて‥。それにまだ終わってないんですよ?ね…ピサロさん。」
彼に続いてやって来た緑の神官服らしいモノを纏った青年が、窘めるよう言葉を挟んだ。
「ふん。どうでも良いが、何故私がこのような…」
ブツブツと不満露わに、持っていた果物やらをテーブルへと置いたのは…滅多にみない銀髪が
見事な美丈夫。
「あら〜愛想最悪だけど、顔だけは見応えあるわねぇ…。」
呑気な口調で笑いかけたのはビアンカ。
皮肉の籠もった言いように、まるで気づかない様子で、夫が頷き微笑んだ。
「…どの時代も、女は逞しいな。」
ポソっと零せば、いつの間に近づいたのか、ヒミコが興味津々漆黒の外套を掴み、引っ張った。
「おじちゃん、魔族だよね? なのに魔王と戦うんだね。偏屈なの?」
おじちゃん・偏屈…どちらも彼には衝撃の評価だ。
ガアーンと固まった彼に、更に追い討ちがかかる。
「ヒミコ。それはおじさんに失礼だよ。きっと優しいヒトなんだよ。」
「ぶわっはっはっは!おじちゃん…偏屈に優しいと来たか!すげぇな!」
心底愉快そうに、鷹耶が腹を抱えて笑い飛ばした。
そんな彼を冷たく睨めつけるピサロだが、効果がまるでないので、苦々しく口元を引き締める。
ふと視線を覚えて、そちらを窺えば、金の髪の少年が、じ〜っと己を見つめていた。
「‥なんだ?」
疲れた様子で、やれやれと尋ねるピサロ。
「あの‥さ、おじさんただの魔族じゃないよね? 気配が違うもん。」
少年が不思議そうに問いかけた。
「おお。鋭いな、坊主。流石勇者だ。」
鷹耶がばんばんと、ワタルの背を叩く。
「へぇ‥。この世界の勇者は少年だったんですか。大変な旅を、こんな小さな子供が‥。
苦労したんでしょうね…」
マリアの隣りに腰掛けて、一緒に果物を食べやすく剥いていたクリフトが、しみじみと口にした。
「ええ、そうなんですのよ。皆さん本当に、大変な旅をして参りましたの。ねぇ、あなた。」
「ああ‥そうだな。君の方も、やはり大変だったのだろう?」
鷹耶を見て、ヘンリーがしんみりと尋ねた。
「‥ま。のほほんとした旅じゃ、なかったな。」
一同の視線を集めた鷹耶が、肩を竦めて答えた。
「‥でも。頼もしい仲間が、支えてくれてるんでしょう?」
クリフト・ピサロに目をやって、ワタルがにっこり微笑んだ。
「ボクもね、大変だったかも知れないけど。でも‥いつもヒミコが一緒だったし、父さんと逢えた
後は、いっぱい甘えさせてもらって‥たぶんみんなが思う程の大変じゃなかったんだよ?」
「そっか‥、お前は家族と旅をしたんだな。‥安心した。」
ふわりと柔らかく笑んだ顔に、とらおうも笑みを深めさせる。
別の時代の勇者だと言う彼も、重いモノを背負っていただろうに。
息子に向けられる瞳はとても優しく、温かだ。
「もし良かったら、君たちもこのまま一緒に、この不思議なお茶会を楽しんで行きませんか?」
用が済んだら帰るとばかりに立ち尽くしたままの鷹耶とピサロに声をかける。
マリアとビアンカを手伝っていたクリフトにも笑みを贈ってそう誘うと、彼女たちも笑顔で頷いた。
「そうそう。おじちゃんの話、私いろいろ聴きたいもの。」
ピサロに興味深々なヒミコが外套の端を引っ張り、着席するよう促すので、渋々従う魔王。
そんな姿に口の端で笑って、鷹耶もワタルの隣へ腰を下ろした。
不思議なお茶会―――
不思議な時間はまだまだ続く‥?
2007/9/5
‥なんかちゃんと終わりませんでした(++;
基本的に、交わらないはずの人間同士の会話が楽しいらしいです、自分xxx
ワンパターンですみませんが、ちょっとでも楽しんで頂ければ幸いですvv
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