10 years ago
その距離が心地よすぎたから知らずあなたを傷つけていたんだね。
ぽつんと唐突に寒い日に、あったかい缶コーヒーを差し出して、にっと笑うような人。
予想外の突然な雨の日に、なぜか必ず傘を二本持ってるような人。
その愛に気づかないほど鈍感じゃなかった。
それが愛とわからないほど無知じゃなかった。
だけど…子供だった。
今となってそれを言うの?
あの頃想いを押し付けずにいてくれたあなたが。
今になって思い知ったの。
あの頃気づけなかった自分自身の気持ちを。
冷たい夜に、別たれた道を突きつけ、けれど最後まで私のことを気遣ってばかりいた人。
雨に打たれ、低く恨み言を言いながら、でもずっと瞳の奥は悲しく優しかった人。
「大人になったな」と笑ったその顔だけは忘れない。
もう二度と会えないと泣きたくなってもいまさら何もできないけれど。
私もあなたを愛していたと知らぬまま、ひとり私のため去っていった薄情な恋人よ。
この胸の中閉じ込めてた幼すぎた想いと柔らかな思い出を、あなたの面影とともに今再び葬るから。
ああせめて、道連れに。