拍手ありがとうございます。励みになります。 ありがとうSS(1/3) IOException SS1 「IFストーリー① 陽菜がラスボスだったら……」
そこは、洞窟の中とは思えないほど立派な神殿だった。床には純白の大理石が敷き詰められ、壁には名前は分からないが、有名だと思われる神々の絵が刻まれている。入り口から奥に向かって左右に、手の込んだ彫刻がなされているコリント式の柱がシンメトリーに並んでいる。夢の中の世界というのは、まさにこのような場所のことを言うのだろう、と祐太は思った。 「よう、斉藤」 神殿の中に声が響いた。祐太は声の出所を探し、正面に彼女の姿を捉えた。 「陽菜……」 最奥の壁に据えられた純白の椅子に、陽菜が両手を組んでちょこんと座っている。祐太は口にしなかったが、とても貧相なオーラが漂っていた。 「何でお前がこんなところに? ここにいるのは加瀬のはずじゃ……」 陽菜は椅子に腰掛けたまま、薄笑いを浮かべて返答した。「なんだってー!」とオーバーに驚く準貴の様子が祐太の目に浮かぶ。 「互いに争おうとするPTもなくなったし、もうゲームは終わったんだ、陽菜。勝手なことを言わないでくれ」 祐太は彼女を倒した後で、とっちめようと考えていた。 「――ハッタリだ。市販されている機械でそんなことができる訳がない!」 市場に出回る製品には安全規格が定められているはずである。多少間違った使い方をしても害が出ないように作られている。 「よく分からないけど、クロックアップルするとBCIケーブルは、その、いろいろヤバいらしいのよ」 言えていないが、ゲームオーバーになったはずの彼女がここにいるのだ。祐太は気を引き締めた。 「足が――動かない……?」 神経自体が通っていないかのように、足はぴくりとも動いていない。 「驚いた? 今のあたしは、雷神で生体電流すらも操ることができるのよ!」 脳から足の筋肉に伝わる信号を阻害しているらしい。以前の陽菜とは桁違いに強くなっているようだった。 「やる気になれば、こんなことだってできるわ」 陽菜が手をかざす。すると祐太は大剣を逆手に持ち、切っ先を自分の喉元に当てた。彼の額に冷や汗が垂れた。 「体が勝手に――、これもお前の雷神のせいか?」 陽菜が手を降ろすと、祐太の体が解放された。剣を握り直した彼の前に、雷を纏った拳を構えた陽菜が迫る。 「そうはいくか、また倒して泣かす!」 大剣の刃先が氷を纏い、伸長していく。祐太は峰を昇華させ、その反動で巨大な刃を振るった。 「前回泣いたのはどっちよ! もっかい泣かす!」 拳の周りに十個の雷の球が浮かんで回っている。中央で一つに収束し、巨大な光の塊になった。陽菜が大きく振りかぶった拳を突き出した。
「まったく、仕方がない奴らだな……」 机に突っ伏している祐太と陽菜を見て、担任はため息をついた。 |
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