【ss:劫火:2部】


任務先の市街が見下ろせる高台に、3つの影があった。
夕陽と同じ色に染まるナルトの、青い目が緑がかっている。
これから燃え尽きようとしてる夕陽にさえ挑むかのように仁王立ちになり、揺れる陽の塊をみつめていた。

すぐ側の岩肌にカカシが腰かけている。
やや猫背に曲げた体躯を片膝立ちに預けるような、楽な姿勢で時を待っていた。
サクラは市街を注意深く眺め、里の入り口の衛兵の動きを観察している。

オレができること

ナルトの目はまだ陽を追っている。

オレがサスケにできること

例えば譲れない条件を出されていたら

取り戻したいのは居場所だけじゃなくて心でもあるはずなのに

「なぜ、すぐに街に入らないの?」

目的地を目前にして行動を停止した二人にサクラは尋ねた。
図面は頭に入ってる。街を目にしたとき、線でできたその地図に、色が付いた。
生活している人が居て、知らない匂いがする。

「繁華街のラーメン屋が開くまであと一時間近くあるから、すこし待つってば」

ナルトの慣れない思考が霧散していく
「もし」「例えば」は苦手だった。

「なによー。考え事?ナルトらしくもない」

サクラに顔を覗き込まれて、ナルトの表情は緩んだ。
強張った気持ちと一緒に。

「うん。ラーメン待っている間にサスケのことを考えてた」

「あんたの好きなものカテゴリはラーメンもサスケも一緒くたなのね」

カカシが喉で笑う。




サスケの名を耳にすると、五感に記憶が走りぬける。
手のひらに残るのは細い手首の感触
目の前の同級生はすっかり背が伸びているのに
カカシの耳に残る声はいつも肩より下から見上げる眼差しと共に聞こえてくる

(なあカカシ)

少し見下ろすように首を傾げると
知りたがる瞳が真っ直ぐに見つめてくる
だけどいつも彼の望む答えをあげてやれないから
最後は機嫌を損ねてしまう

だっておまえはいつも、過去を見つめていた

そんなところを無意識に自分と結びつけて

だから、お前の進む先がどこに行こうとしているのかがわかるから

わかったようなフリをして多分同じ場所にいたのだ
未来ばかりを輝かしく語るあの太陽が鬱陶しくて同じ影に身を潜めた

二人きりで誰もいない闇に身を潜めたら側にあるものに触れたくなるでしょ?
世界で唯一人サスケじゃなければ駄目なんて思ったことなど無いのに
だけど二人で見つけてしまった居心地のいい場所に自分たちしか居なかったら手を伸ばしたくなるから


どこかで知っていたのかと思うくらい
受け止める口付けが応えるように動く
目の前にあるそれを拒めるほどの理性は無い
だって絶対きもちいいに決まってる

舌先一つで声は色づいて
小さく吐き出す息が荒く熱くなるから
手のひらで包んだものが解放するまで動かし続ける
たとえいやだと懇願されても

細く白く幼い体がしなり、手の中で脈打ちそれらを濡らした
強張る胸の先を啄ばんだ口を離さずに、濡れた数本の指を侵入させる
折り、拡げ、指の関節と指先で中と外からばらばらに動かして緩める
嬌声はその場に満ち、胸先から音を立てて口を離すと痙攣するように震えた

サスケの出した白濁の液で濡れた指
張り詰めた自身に触れ、ようやく拡げたそこに突き、沈んだ
暴れる身体を、圧し掛かった上体と手首を押さえつけることで拘束する
まだ細い首筋にいくつも跡を残し、いつまでも動く
嬌声の色が変わりサスケが幾度放っても、突き上げる衝動は止まなかった



「先生?」

「あ?」

呼びかけられるよりすこし早く、サクラの影に気付いた
カカシの顔を覗き込んできている

「すっごいぼーっとしてたよ?」

「そうでもないよ」

振り払うように立ち上がり、伸びをして時間を確かめた。

「カカシせんせーも思い出したりするんだな」

何を?と尋ねたら薮蛇になりそうだから止めた。
何をもってそれを言い出したのかも。
サクラやナルトと共有している喪失感だとでも思っているなら勝手にどうぞ。

「うるさいよ。あー…、そういえば、おまえらも昔は可愛かったのになー」

「今は頼もしいでしょ?」

市街へ向かって歩き始めたカカシの隣にサクラが並び立つ
軽やかな足取りで、自信を持った振る舞いで。

「うーん、そう思えるのはもう少し先かな」

不満の声と尖らせる唇。
目元も顔つきも、サクラは大人びてくる。

あいつらと同じ光の下になんか、恥ずかしくていられないよな

そんなふうになにもかも同じ場所に無理矢理いかせようとしてたわけじゃなかったんだ

ただ未来を。

サスケに求めたものと与えたものは矛盾し、願う先までもが裏腹だった。

与えてやれると過信した傲慢をアレが灰にしてくれるなら、そう望んでみたいとナルトの後頭部を小突いた。




【ss:劫火:2部】



ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。