俺は手の中にあるこのちいさな精密機械のふたを開いて、かつてないほど人類の脳に溶け込んでしまった数字の羅列を見つめる。
数字の上にはアドレス帳やメニュー、カメラ、世界へと繋がるボタン。
そこから俺が呼び出すものは、君に直接届くはずのメールアドレス。

伝えたいことはいくらでもあるんだ。
「今日はこんなことがあったね、あんなこともあった」
君も知っていることばかりなのに、どんな些細なことでも、何度でも、その記憶を交わして、形に残る記録にしてしまいたい。

でも、それよりもずっと。
君に伝え、記録し続けたいのは。


3、3、3、2、2。


たった五回のプッシュで表現できる、俺のきもち。
どんなに長い文章の中にも、短い文章の中にも、必ず紛れ込ませている二文字の、真実の言葉。

今はこのちっぽけな機械に頼るけど、逢ったら声に出して、君にたくさん伝えるから。


「  」


開いたメールの前で、君が微笑ってくれればいい。





携帯10題→05//3、3、3、2、2
『少年はにびいろをした不可避の幻を見る』
↑こちらからお借りしました。





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