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(夏戦でフランス昔話『謎解き名人のお姫様』パロ)
主人公→健二 お姫様→夏希
オールキャラ


■01話

 昔々あるところに、謎解き名人と名高いお姫様がいました。彼女は並みいる求婚者達をその明晰な頭脳と達者な歯切れの良い啖呵、国一番の度胸でことごとく撃退しました。お姫様は夢みるお年頃、運命の王子様を見つけるまで結婚したくなかったのです。その意志は堅く、しつこい輩に対しては武力行使も辞しません。姫のお気持ちは分かるが、世継ぎを作るのが国のため。頭を抱える家臣達に、お姫様は腰に手を当てこう言い放ちました。
「わたしに解けない謎を持ってきた人と、結婚する!」
 それまでどんな相手にも、屈服しないんだからね!
 かくして、身分問わず・年齢性別すら超えた、国を挙げての求婚レースが火蓋を切ったのでした。

 さて、ここにも求婚レースに参加しようという少年がいました。彼の名前は健二。地方に住む一貴族です。健二はただ一度を除いて田舎から出たことはなく首都への道行もよく知りませんでしたが、そこは親友である佐久間がバックアップしてくれる手筈です。旅慣れた佐久間は、姫に淡い想いを寄せる親友の恋を応援していました。
 健二の家を訪れた佐久間と待ち構えていた健二は、手早く旅支度を調えました。男同士の二人旅ですから、女性と違って細々した生活品は必要ありません。少量ずつに分けた路銀と最低限の道具、佐久間の頭脳と話術と、健二の紙とインクさえあればそれで事足りることでしょう。あとは出発するだけです。
 しかし、彼等には一つの問題がありました。健二の母親です。健二は浮かない顔で親友に言いました。
「母さんはきっと僕を家から出してくれないよ」
「そんなわけないよ。母親は息子の栄達を願うもんだ」
「知ってるだろ。留学してからこっち、母さんの目が厳しくて……僕を閉じ込めておきたいんだ」
 健二の母親は、元々息子には無関心なところがありました。息子が成長すると拍車が掛かり、放任されて育った健二が数学の才能を見出されて首都へ留学したときも、息子の事なんて知らないという態度でした。ところが首都で失敗した息子がしょぼくれて帰郷すると態度が一変し、失われた時間を取り戻すように傷ついた息子に寄り添うようになりました。傷ついた息子に思うところがあったのでしょうが、今では片時も側から離れてくれません。放任してきた反動が来ているのだろう、と佐久間は分析しています。健二が首都の大会で準優勝したらコレかよ、という冷ややかな眼差しもありましたが。
「お袋さん、思い込み激しいもんなぁ」
「うん…」
 母の気持ちは嬉しいけれど、少々所でなく息苦しいというのが健二の本音でした。
「だったら俺が説得してやるよ。大丈夫だって、きっと行ける」
「佐久間」
 力なく揺れる目を見て、佐久間は発破を掛けました。
「諦めたくないだろ? 好きなんだろ、お姫様が」
 一拍間を置いて、健二は双眸に意地の光を灯します。
「うん。出来るかどうかはわからないけど、諦めたくないんだ」
「よしっ。じゃ、前哨戦と行きますか」
 今は微笑む健二に、佐久間は嬉しくなって言いました。
「前哨戦?」
「お姫様が本番だろ。だからお袋さんの時点で前哨戦」
「ああ、そっか…。ここをクリアしないと謎以前の段階で敗北か」
「そういうこと」







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