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風邪ひきさんへのお題 5/お大事に
全5種
微熱だと高をくくっていた。
大してつらくもなければ苦しくもない。大事をとって薬も飲んだ。
だから、まさか倒れるなんて、思いもしなかった。
「…ごめんなさい」
「ん? いいってことよ」
銀八はベッドに頬杖をついたまま、ポンと頭を撫でる。
大きくて、温かい手。
どうやらここまで銀八が運んでくれたようで、律儀にも看病までしてくれている。
なんでも、お姫様だっことか。
「でもまぁ…びっくりしたな。ふらふらしてたからまさかとは思ったけど」
ぼんやりとしか覚えていない。
視界が霞んだと思ったら、ふわりと意識を手放していた。
支えてくれたその腕は、力強くて温かかった。
「ここにいてやりたいけど、生憎俺は教師だからな。授業ってもんがある」
「…別に、」
寂しくないです、と言ってみた。
語尾が少しだけ小さくなるのが気になった。
そうか、と銀八はくしゃっとまた頭を撫でる。これじゃあまるで、子供扱いされているみたいだ。
よれよれの白衣をなびかせてドアまで歩きだす。
手をかけて、それから振り向く。
「お大事にぃ」
ニッと笑った。
心細さとか、そういうものを打ち消してくれるようだった。
あとはただただ静寂に満たされて。そのまま目を閉じた。
寂しくない、なんて嘘。
END
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