狐狸の九州旅行




8月17日 門司港行きフェリー





 某年夏、狐とともに九州に旅行する。適当に宿を予約し、旅行のしおりも作った。タイムスケジュール、部屋割、九州旅行のテーマソング、持ち物リスト、日記欄が満載の修学旅行のしおり匹敵のハイクオリティなしおりだ。行きの移動手段は東京港フェリーターミナルから、九州は福岡・門司港までフェリーである。こころみにひらいた旅客フェリーのHPに夏の幻影を見てしまったのだ。
 フェリーは新幹線より料金はわずかに安いけど、時間効率を考えたらはるかに新幹線に利があるカモシカ。しかし夏・海・輝き・大海原に浮かぶ船……比叡の修行僧ですらこの誘惑には勝てマイケルジャクソンエリクソン。アホな狐狸はもちろん勝てない。
 熱いリビドーを胸に秘めたる二匹は、二泊を要する船旅へただ男のロマンのためだけに立つのである。
 さてカモシカもマイケル・ジャクソンもエリクソンもびっくりなフェリーのスペック一覧を以下に紹介しよウミガメ。


・冷凍食品自販機…船内滞在中(2日半)の全ての食事を供給する神
・電子レンジ…神から賜ったありがたい冷凍食品を咀嚼可能な状態にする神Ⅱ
・紙皿…食品をディッシュアップする使い放題な皿。こいつは遠い昔神々の裁きを受けて天界を追われたただの皿。
・水…タダで飲める水。紙皿とともに天界を追われた。
・展望露天風呂…窓から茫洋たる海を見渡せる風呂。ドライヤーない。二日目はお湯がヘソ下まで激減していた。なぜ?
・個室…ベットのある個室。二段ベットがあるだけ。牢獄のように狭いので基本的には外のフリースペースでダラダラ過ごし、寝に帰るだけ


 船は夕方六時半に出港。夏の日はまだ明るく、狐狸はむやみに写真を撮りまくる。一通り撮影を終えたあたりで日も沈み、何もやることがないことに気が付きはじめる。とりあえず道中ぬかりなく購入したチューハイを飲む。
 夜ご飯。狐はインスタント・リゾットみたいなものを自販機で買い、狸はカップラーメン。リゾットは不味かったらしい。この後も狐はいまいちな冷凍食品のチョイスを繰り返す。不吉なエンジンの振動とともにフェリーの暇な夜は更ける。(狸)




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