失効猶予 [ルルーシュってさ、キスくらいしたことあるの?」 「死ね!」 くりくりとした瞳をこちらに向けて無邪気に尋ねる幼なじみを一喝する。 (朝っぱらから何を言い出すんだ!こいつは!) 「うわっそんなに怒ることないだろ!」 「黙れ。前々から思っていたのだが、お前はデリカシーに欠けている。不躾な質 問はやめろ。」 「・・・ということはないんだね。」 ・・・自爆だ。 ルルーシュは心の中で舌打ちをする。 失言だった。 こんなにムキになって否定しては認めているようなもので。 自分の眉間がいつもより更に深く刻みこまれるのを感じる。 むかつく。 ルルーシュは憎々しげに顔を歪め、彼に背を向け歩き出した。 「・・・じゃあ、してみる?」 「は?」 瞬間、彼の大きな手で肩を掴まれた。 驚きに目を見開くと、目の前にはいつになく真剣な顔をした彼がいて。 徐々に狭まる距離に耐え切れずルルーシュはきつく目をつむった。 「・・・嘘だよ。」 「・・・へ?」 予想外の言葉に瞳を開けるといつもどうりの彼の優しい笑顔。 (・・・からかわれた!) ルルーシュはスザクを勢いよく突き飛ばした。 悔しい。 悔しい悔しい悔しい! こうして真っ赤になって彼を睨みつける自分はきっと惨めだろう。 このまま終わるのは、天より高いプライドが許さない。 「ファーストキスは大事にとっておきなよ。」 悪びれなく言うスザクに何かが切れる音がした。 「・・・スザク。」 「え?・・・ンッ!?」 振り向いた彼を力づくで引き寄せて。 彼の薄い唇に自分の唇を押しあてた。 体を離すと大きく見開かれた瞳で彼がこちらを見ていた。 「ざ、ざまあみろ!」 馬鹿にしたら、ゆるさない。 ルルーシュは目を反らしながら吐き捨て、呆然と立ち尽くす彼を残して走り去っ た。 ささやかな報復。 彼にも少しくらい利いただろうか。 まあ、今日は 彼のいつになく驚いた顔を見れたので。 これで勘弁してやろう。 「あ〜あ・・・」 去ってゆく彼の後姿を見つめながらスザクは深いため息をついた。 あのプライドの高さ。 なんとかならないのだろうか。 もちろんムキになって強がる彼は可愛い。 そう、可愛いから困るのだ。 「君がいけないんだよ」 僕が折角逃がしてあげたのに。 「馬鹿だね、ルルーシュ。」 時間切れ。 だから俺はもう知らない。 *********************** 拍手ありがとうございました!!! |
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