お届け物にはご用心(ムクツナ)


「何だ・・・これ・・?」

ある日、ツナ宛に荷物が二つ程届いた。
一つは花束が入っているらしく、花屋の店名が記されていた。だが、もう一方の荷物は結構大きく、ダンボールには差出人の名前も、店らしき名も書いておらず、『速達』として届けられたのだ。
生憎今は母の奈々とリボーン達は夕飯の買出しに出てしまっており、この明らかに怪しい小包を開けるのは必然的に自分なのかと頭を抱えた。
「あ、でもリボーン達が帰ってきてから開けてもいっか。な、なんか怖いし・・・」
ツナは言うや否や、まず花束の方の小包を開け、それをすぐさまリビングにある花瓶へと活ける。
そしてあの怪しいダンボールはそのままリビングに運ぼうと手をかけた刹那、中がゴソゴソと動き出した。
「ヒィッ!な・・・何だよコレ!?」
一歩また一歩と後ずさりながらツナは叫んだ。
確かに急にダンボールが動き出せば誰でも驚くだろう。
「・・・・・フフ」
「ダ、ダンボールが・・・し、しゃ・・喋った・・・」
「クハハハハハー!」
「うわーーー!?すみません!ごめんなさい!・・・って、はぁ?」
頭を抱え、涙ぐみながら身体を丸めて怯え、何故か謝りながら叫んだが、現れた人物を見るとツナは数回瞬きを繰り返す。
「クフフ、驚きましたか?ボンゴレ」
「・・・・どうして宅急便で運ばれて来たの?」
ダンボールを突き破って現れたのは、一時期並盛を脅かす存在だった六道骸、彼の姿だった。まるで悪戯が成功した様にクスクスと笑う骸に対し、ツナの反応はとても冷たかった。否、もうこれくらいでは驚かなくなってきたと言っても過言では無いだろう。
「おや?思った反応より冷たいですね」
「オレの反応云々よりも、何で骸が運ばれて来たのかが気になるんだけど・・・」
「クフフ、気になりますか?」
「取り敢えず、その散らかったダンボールを片付けて欲しいかも」
ツナは溜息を一つ吐き出すと、玄関先に散らばった紙切れに視線を向ける。
もしもこの惨状を奈々に見つかったら確実に怒られてしまう。
「ボンゴレは会わない間に随分と僕に冷たくなりましたね・・・。久々の再会だと云うのに」
「・・骸」
わざと声音を落とし、地面のタイルを見詰めながら項垂れ、そして話を続けた。
「僕は、君に会えない間ずっとボンゴレをどんな風に脅かしてやろうかと考えていたのに・・・・」
「いや、そんな事一々考えなくて良いから!!」
それこそ放って置けば、むしろ、追い返したりすれば良いものの、悲しいかな、沢田綱吉と云う人物はボケには突っ込みを、そしてどんな相手だろうと無下に扱えないのだった。
例え、それが敵だった人だとしても・・・。
「あーもー!オレも一緒に手伝ってやるから、早く片付けようよ!」
いつ奈々達が帰ってきても可笑しくは無い時間帯に焦れたのか、ツナはしゃがみ込み、ダンボールの切れ端を拾い始めた。
「これ片付けたらオレの部屋で話そうよ。色々話したい事もあるし」
「ボンゴレとベッドの中で、愛を語らうって事ですか?」
「誰もそんなこと言ってないから!オレが言いたいのは、宅急便で運ばれて来た理由とか、他の二人はどうしてるのかって、そうゆう事だよ!ったく・・・」
「あぁ・・・なんだそんな事ですか。残念」


一通り紙切れを片付け、と言っても結局骸は片付けなかったが、2人はツナの部屋に行く事になった。
「で?何か用でもあったの?」
「いえ、特には」
「じゃあ何で家に来たの?後、さっきから聞いてると思うけど宅急便で来る意味が解らないんだけど」
「ボンゴレは2人きりになると積極的ですねー」
「・・・・オレの日本語通じてる?」
「えぇ勿論。小鳥が歌う様に軽やかで、華がある声ですから思わず聞き入ってしまいます」
「あのさー・・・・」
「ここに来た理由なんて簡単ですよ。ただ、君に逢いたかった。声を聞きたかった。笑いかけて欲しかった。名前を呼んで欲しかった。・・・それだけの事です」
急に真剣な目を向ける骸にツナは思わず息を詰めた。
まるで捕えられたかの様に動けず、言葉も発する事が叶わない様だった。骸は構わず話を続ける。
「クフフ、初めてですよ。こんな風に相手を想う事は」
「・・・あ、・・その・・・・」
「後は君が僕に笑いかけてくれたら今日来た意味があるんですけどね・・・ダンボールから出て来たら面白いと思ったんですが、残念ながら外してしまった様ですし。折角、嫌がる千種と面倒臭がる犬に梱包と宅急便の手配を頼んだんですが・・・」
後で2人の言う様に失敗しました。って謝らなければ。と、苦笑いを浮かべながらそう告げる。
「・・・・まさかあの2人にさせたの?」
「えぇ。それが何か?」
「〜ぷっ、アハハハ!はー意味分んねー、無理矢理2人にやらせて・・・く、アハハ!」
「ボンゴレ?」
ツナは腹を抱え笑い出した。嫌がる千種と面倒臭がる犬の遣り取りが安易に想像ついたからだ。
多分その考えはほぼ確実だろうと、ツナは確信めいた物さえ感じた。
「何がそんなに愉快なのかは解りませんが、まぁ、笑ってくれたことですし、良しとしましょう」
骸は立ち上がり、ツナの前に跪くとその額に触れる程度のキスを落とした。
「え!なっ・・!」
そして鼻先、最後には唇にキスの雨を降らせ、耳元に囁く。
「クフフ、ではまた・・・。愛しのボンゴレ」
骸は窓枠に手をかけ、そのまま降りたち、姿を消した。

温もりと、耳に残る声を置き土産にして・・・・。




End





―おまけ―

「クフフ、今度はどんな風に登場しましょうか?」
「はいはーい!イイ事思いつきましたー!!」
「はい、城島犬君」
「骸さんがー、裸でダウンコートを着てウサギちゃんの目の前でバッ!って開けばイイと思うびょん!こう・・・バッ!って!!絶対驚くと思うんれす!!」
「・・・・・クフフ」
「・・・・えへへ」
「犬、骸さんの事あまり怒らせない方が良いよ」
「うるせーよ!メガネマン!!」
「・・・・ハァ」






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