朧月が映る空を見上げながら、夜の道を二人で歩く。

「寒くはないか?」

 彼が問う。

「寒くないよ」

 彼女は答える。

 春の夜は優しく、霞む月が静かに微笑んでいる。

 会話を交わすでもなく、ただゆっくりと歩く二人。


 そこに風が撫でる様に二人を掠めた。


「寒くはないか?」

 彼が問う。

「少し」

 彼女が答える。


 彼は彼女の手をとると自分の服のポケットへとそのまま押し込む。

 突然の行動に驚く彼女。慣れない行動に素っ気ない表情で顔を赤らめる彼。

 彼女はクスリと笑うと、彼の手を握りかえした。




ありがとうございました。

あと1000文字。