「何を見ているのかな?」
「いえ、別に。」



兄の私室から見えるのは花々に彩られた華麗な庭。
そこを玄関に向かって歩く茶色の髪をした少年を、確かに見ていた。
もう届かない愛しさを殺して。

軽やかに歩く彼の表情は、心なしか明るい。
騎士は、彼の姫に逢いに来たのだ。




「ルルーシュ、嘘はよくないよ。」
「…兄上、なんの真似ですか?」



いつの間にか背後に迫っていた兄に、肩をつかまれ向き合う形をとらされた。
手を顔の横に付いたかと思うと、にっこり笑って低く囁く。


「私の方を向かないのなら、向かせるだけだ。君はもう、私のものだからね。」



お仕置だよ、と顎をとられる。
花を摘むような、口付け。
それはやがて荒々しいものになり、閉じた瞼に映る花と少年は、次第に虚ろに、ぼやけていった。



手入れの行き届いた庭から、ふと窓を見上げた少年は、白を纏う碧い瞳が誰かと口付けを交わしつつ、こちらを見据えるのを見た。


その碧眼は、確かに笑っていた。














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