未来に来て、いろいろあった。
修行して休んで修行して休んでを繰り返す日々は、ツナは獄寺と一緒にすごす時間を大幅に削られてしまった。
早くみんなを安全な過去へ戻してあげたい気持ちが強いから、仕方ないとこと割り切ってはいるけれど、やっぱり時たま無性に会いたくてたまらなくなる。
長い廊下を歩く。
もうみんな寝静まった夜だから、誰かに聞いたり大きな声で呼んだりも出来ない。

「どこいったんだろう」

山本が来たことで、離れてしまった獄寺との部屋割り。
山本が十代目を差し置いて一人部屋なんて! と、烈火の如く獄寺が抗議したのが原因だ。あのときはさすがに空気を読めと叱りたかったけれど、結局獄寺は山本とふたり部屋になり、ツナはひとり広い部屋を与えられた。

「そんなことするから、余計に会えなくなっちゃうんじゃん」

口唇を尖らせて不満を口にしても、もう済んでしまったことだ。
ツナは獄寺と部屋が離れ、会う時間も余計に削られてしまいました。おしまい。
なんて思いながらも、ツナは薄暗い廊下を歩く。
彼の修行場や、行きそうな場所を覗いてみてもどこにもいない。寝ずに頑張っているジャンニーニに聞くのも憚られる。
ボンゴレ後継者に備わっているらしい超直感というのも、こういうときにはまったく役に立たない。

「って、オレ別に後継者とかそういうのなりたくないし!」

自分の思考にぶんぶん首を振って否定し、ツナはばっと口を押さえた。
みんなが寝静まっているときに、大きな声を上げてしまっては起こしてしまう。それでなくても疲れているのだ。みんな。
昼間はさして気にならない自分の足音さえ、ひどく響いて耳障りに思える。

「あれ」

「にょおん」

突然手前の扉が開き、すました顔でツナの前を瓜が横切っていった。
また逃げ出したんだなと苦笑して、まさかと思い瓜が出てきた扉を覗き込んでツナは仕方ないなとため息をついた。

「まーた、瓜とケンカして負けたんだ」

暗い部屋の中には、床に直に寝転んでいる獄寺がいた。
すよすよと緩みきった顔で寝ているものの、顔にはうっすら引っかき傷が出来ている。
廊下から細く入る光に気づいたのか、眉を寄せて唸る獄寺に慌てて室内に滑り込むと、そのまま彼の傍らにツナもちょこりと座り込んだ。
あっという間に真っ暗になってしまったけれど、不思議と恐怖はなかった。
獄寺のとなりにツナも寝転んで、目を閉じる。
床は固かったけど、吐息さえかかるほど獄寺の傍に来たことでふっと気持ちが軽くなった。
眠っていても人の気配に聡い獄寺が、ツナが近づいても起きなくなったのはいつからだったろう。それが自分以外の誰かだと、険しい顔をして起きると知ったのはいつだろう。
自分になら気を許してくれることが嬉しい。自分だけが特別なんだと言われれば、こうして自分から近づくことも怖くはなくなる。

「明日、一緒に朝ご飯食べようね」

うとうととやってくる眠りに抗わずに告げて、ツナは意識を手放した。
目覚めのときはきっと、隣でする素っ頓狂な叫び声だろう。
思うと、笑みがこぼれた。






END
---------------------------
パチパチありがとうございます!
お礼文は適当なときに特にアピールもなく変更したりします。
※過去お礼はその内どこかにまとめたいと思います。