*雲雀×綱吉*

「・・・あ、」
ベッドの、少し手を上に伸ばせば届く位のところにある目覚まし時計が
綱吉の起床時間を知らせる。
綱吉は珍しくその時間、7時ピッタリに時計を止め目を覚ました。
そして遠足当日の子供のように
直ぐに寝ぼけ顔からぱっと目が冴え
ベッドから飛び起きてカーテンを引いて窓を開ける。
強い朝日に一瞬くらりとしつつも
窓から顔を出して外を伺った。
ほぼ無表情だったその顔の眉がとたんにへにゃりと垂れる。
「やっぱり、桜、散ってる・・・。」

―――昨日の金曜日、応接室にて。

『桜、綺麗に咲いてますね。』
『うん。明日が満開だって。
 ・・・明日、お花見でもしようか。』
『わあ、いいですね!』
『勿論、最高の場所を貸し切って。』

雲雀の最後の言葉に苦笑いしながら交わした約束。
それを心待ちにしていた。
約束したのは放課後で、その時は雲一つないとまではいかないまでも
確かに晴れていた。
しかし月が昇り始めた頃、雲行きが急に怪しくなり、
直ぐに強い風を従えた雨が並盛に襲い掛かった。

朝日が昇る前には既に止んでいたものの
その爪痕はとても大きかった。

満開のはずの桜たちは花弁から地に散らばり落ち
かろうじて持ち堪えたものも、気のせいか元気がなくしなっているように見える

残念ながら、花見をする気分にさせてくれる美しいオーラは放っていなかった。

「雲雀さん、この風景見たら悲しむだろうな・・・」
「僕が何だって?」
「えっ、わっ、雲雀さん!」

窓の直ぐ下から伸びる屋根からの突然の声に
綱吉は琥珀色の目を大きくして驚く。
屋根に上ってきたらしい雲雀は、
すくっと立ち上がって綱吉の窓の左隣の壁を背に寄り掛かった。
雲雀はどうやらバイクで来たようで、
玄関の門の前にそれと思われるものが停めてあった。
どうやらバイクの音も聞こえない程考え込んでいたらしい。

(雲雀さん・・・)
こんなに早く来たのは、きっと・・・
(楽しみにしてて・・・?)

「あっ、あの・・・」
「楽しみにしてたんだけど、残念だったね。」
「・・はい・・・俺も楽しみにしてたから、雲雀さんとのお花見。」

琥珀の瞳が俯きかけた刹那、その視界の端で学ランが僅かに震えた。
今は季節の変わり目。
桜が咲いてもう春といえど、やはり朝は冷える。

「花冷えってやつだね。」
「花冷え・・・」

花、という単語に反応してか、綱吉の声は更に落ち込んでしまった。
そんな綱吉の頭を、雲雀がふわっと撫でる。

「何もそこまで落ち込むことないでしょ。」
「そう、なんですけど・・・」

「別に、今年が最初で最後のお花見ってわけじゃないんだから。」

顔を覗き込んで、瞳を合わせて、
唇と唇をそっと触れさせて
目の前には、日差しに輝く琥珀色の大きな儚げな瞳。

「僕達はずっと一緒なんだから、また来年にすればいいよ。」

そう、この先ずっと、離れることはないんだから。
いずれまた、春は巡ってくる。

ずっと一緒にいれば、何回でも桜は咲くでしょ?

「あ、そうですね!///」
ほんのり頬を染めて、ふわっと花が咲いたように笑った。
まるで桜のように。

end


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