『失う世界に5のお題』(風花さま)
1、世界の終焉を垣間見た(『薄桜鬼』 薫→千鶴)
※学園SSL設定です※
窓から見える風景はまるで変化がない。腹立たしいほどに。
風紀委員の特権で、冬のおとないを痛々しく感じられる一室はおかげさまでオレが独り占めである。吐く息はまだ白くないけれど、みみがもがれそうな冷気は建物の隙間から容赦なく襲ってくる。
見わたす愚民どものなかに、探す人物は容易に見つかった。何せ校内唯一の制服をまとう人物だ。
・・・・たぶん、制服なんかで見分けなくたって、きっと簡単に見つけられるのだろうけれど。
探し求めた姿は案の定、にくい男の隣にあって。聞こえないやり取りが聞こえそうに錯覚するくらい、少女の表情は明朗だった。
そしてその少女の動向を取りこぼすことのないように注いでいた瞳を、細くすがめる。目を凝らすように。あるいは微笑み損ねたかのように。
ふと、かすかな違和感を感じ取り目を瞬かせた。
「・・・・ちづる?」
子供のように妹を呼ぶ声音は、けして本人には届かない。だのに、まるでオレに確信を与えてるように、千鶴は隣の男に微笑みかけた。見たことのない、表情で。
それを認識した瞬間、視界が白くなった。簡単な話だ。窓辺のカーテンを、考えるより先に引いていたのである。おかげで風にあおられたカーテンが、まるでこちらを脅すようにひらひら揺れる。
・・・・まだ、見ていない。オレはまだ知らない。何も知らない。オレの知らない顔をして笑う千鶴を。
いつか目の当たりにするのかもしれないと、ずっと恐れていた表情の千鶴を。
オレが世界で一番憎んで憎んでそして愛している妹の、男を『男』と見る目を。
・・・自分がほんとうは、そのまなざしをのどから手が出るほど欲しいことも。
まだ、気付いていない。
(―――――ああ、死にたいな。)
何も知らないまま。気付かないまま。世界なんて終わればいいのに。
どうせ世界から、オレと千鶴以外の人間が消えてくれることなんてないのだから。ならば世界が終わればいい。
――――当然、オレの愛する『妹』と一緒に、オレはその瞬間を迎えたいに決まっているけれど。
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薫→千鶴。学園モノ。多分相手は沖田先輩。
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