Thanks For Clap

Title01


拍手本当にありがとうございます。
いつも生きる力を頂いています!!
拙いお話のお礼が拙いお話とかもうホント申し訳なくてしょうがないんですけども、以下の10話を納めております。
順番に表示されるようになってます。どれかひとつでもお心に残りますように!

お品書き

1,暗部テンカカ 『春節』
2,シカカカ 『ネコミミDEシカカカ!』
3,四カカ 『call my name』
4,アスカカ 『不器用な恋』
5,現代パラレルテンカカ 『リーマンテンカカ妄想その1』
6,ジラカカ 『ひとでなしのこい』
7,暗部テンカカ 『いい夫婦の日』
8,シカカカ 『雨ざらしの恋』
9,現代パラレルテンカカR-18 『リーマンテンカカ妄想その2』
10,イタカカR-18 『終わりのない夜の始まりに』

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大晦日の時に書いたお話です


『春節』



『暗殺戦術特殊部隊』。略して『暗部』。それが僕の所属する部隊の名前で、過去も家族も記憶もない僕の、たった一つの帰る場所の名前だった。

「おー猫面、カカシ知らねえ?」
「え・・・さあ」

暗い廊下を曲がったところで狸の面を被った先輩に声をかけられる。
ここでは「ひと」である必要がない。素性も素顔も関係がない。
あるのはただ誰がどんな能力に長けているかということ、作戦における組み合わせの相性と、練度だけ。構成員は常に獣の面を被って任務にあたるのが常だ。
・・・だからといってここ、『暗部基地』においてまでそれは適応されるものではないはずなんだけど・・・えーっとそれは僕にもわからない「オトナノジジョウ」ってやつらしい。

「ふーん、あいつに会ったら言っといてくれよ、年越しの任務に就いてない奴はみんな食堂で年越し蕎麦食べるってよ。」
「は・・・はい」

きょとんと首をかしげた狸面がとてとてと食堂に向かって歩いてゆくのを見送る。

「そっか・・・もう年が変わるんだ。」

今年は珍しく年をまたぐ任務に就いていない年だった。毎年この時期の任務にはカカシ先輩と一緒に当たることが多くって。

『ほらほらテンゾウ、初日の出だよ。』

雪の中に身を潜めてる時、里に向かって帰還してる最中、水場でひと時休憩したとき、どんなに大掛かりな部隊の中にいても、逆にたった二人の任務の時にも、不思議とカカシ先輩はわざわざ僕に声を掛けに来てくれた。
被った狗面をちょんと押し上げて、晴れた日なら光る銀髪を日に透かせながら、決まって笑ってこういうんだ。

『また今年もよろしくネ、テーンゾウ?』

もちろん顔の下半分は黒い口布が隠していたけど、左の瞳は縦に走った傷が塞いでいたけど、その顔は白い花みたいに綺麗なことが僕にもわかった。

『テンゾウ』っていうのはカカシ先輩が初めて僕と組んだ時にくれたコードネームで、以来先輩はその名前で僕を呼ぶ。任務の度に違う名前か被った『猫面』で呼ばれる僕にはそれが、ただひとつの宝物だった。
暗闇の中を歩いてきた僕の、たった一つの明日への希望だった。

「あ、猫面、カカシの奴どこだ?」

今度は廊下のすれ違いざま、熊の面を被った先輩に声をかけられる。

「知りませんよっ!なんでみんな僕にカカシ先輩のこと聞くんですか!?」
「えーそりゃアレだろ、お前が」


「・・・『テンゾウ』だから」
「意味がわかりませんよ!!」
「そうか?俺は自分にしちゃあ優しい答えをくれてやったつもりだがなあー、親の心子知らずってやつだな!悲しいぜ俺ァよ。」

がはは、と笑って熊面の先輩が手を振って通り過ぎる。随分行ってしまってから「あーおまえも食堂来いよなー」なんて間延びした声が聞こえた。
緊張感のかけらも感じられないけど、あの人だって小隊を任されるほどの力のある忍びだってことを僕だって知ってる。
いざ任務ともなれば包囲・殲滅を得意にしていることだって。

「あ、いたいた、テンゾウ!」

とりあえずは皆が探してる先輩を探そうと医務室への角を曲がった僕に銀色の影が手を振った。カカシ先輩だ。

「いたいた、じゃないですよ、みんな探してましたよ?」
「へ?」

狗の面を斜めにかけたまま銀髪がきょんと首をかしげる。
夜空の色をした右目を縁取る長い睫毛が瞬いた。

「オレ会う奴会う奴に『猫面どこ行った』って声かけられるからさー探してたのよ?」
「僕も今、『先輩はどこだ』ってみんなに聞かれるから・・・探しに」

「「『お前に聞けばわかると思って』って」」

二人の声が重なった。びっくりして顔を見合わせる。僕の目に映る先輩は今、とても4つ年上、戦場では鬼と呼ばれる暗部部隊長には見えない、けど先輩の瞳には子供みたいな顔の僕が映っていた。
一瞬の間の後に、笑いあったのは同時だった。

「ぷっ・・・はは、何それ」
「ホント・・・何なんですかね」
「ま、いいんじゃない?部内公認ってことで。」
「え?ちょっと待って先輩、なんですか!?何が公認なんですか!?」

ひらりと食堂に向かって踵を返した先輩を慌てて追いかける。
どうやら先輩を探してた僕と、僕を探してた先輩の要件は同じだったらしい。
不意に鼻先を美味しそうな出汁の匂いが掠めた。
何か思い出したようにぴたりと立ち止まった先輩の、そのしなやかな背中にぶつかりそうになって慌てて僕も立ちどまる。
余った歩幅にちょっとだけバランスを崩しながら。

「わわ」
「公認っていうのは」

僕の肩を掴んだ先輩がするりと口布を下ろすと、綺麗な唇が笑みを掃いた。
その素顔を見た衝撃に固まる僕に、僕の口に、柔らかいそれが重ねられる。

「こーゆーこと?」

いたずらを思いついた猫のような瞳が細められる。頭の中で星が散りまくってる僕には「僕よりあなたの方がよっぽど猫の面が似合いますね」なんて軽口も出てこない。
金魚みたいに口をパクパクさせながら真っ赤になって固まる僕の額に、また小さく口づけられる。

「はいはい、行くよ、『テンゾウ』」
「先輩っっ!!いまの!今の何ですか!!」
「んーさあ何だろーねえ」
「も、もういっかい!もう一回してください!!」
「んーそうだなーお前が大人になったらな。」

笑った先輩が横に掛けてた狗の面を被りなおす。
歩き出す直前、白い貝細工みたいな耳が真っ赤になってたのを僕は確かに見たと思った。



「ほーんと、暗殺やらなんやら請け負っちゃう俺たちが並んで年越し蕎麦食ってるなんて知ったら敵さんも卒倒すんじゃね?」

器用に面を横にずらしながら狐面がずず、と蕎麦をすする。
案の定というかなんというか食べてる蕎麦は『きつねそば』だ。
「違いねえな」って笑ったのは熊面。

「なんにしても区切りって大事だろ。
また生きて新しい年を迎えられる感謝をしねーやつは長生きしねえよ。」

麺を啜るために押し上げた熊の面のした、髭面が面と同じ猛獣を思わせる口元でにやりとわらった。

「ここはそういう場所だろ。」

「あ、そういやカカシと猫面は」
「ま、もうすぐ来んじゃね?」








終話



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