▼凛の腹黒日記▼ 「はーな」 「…なんだよ」 ここは俺の家。 六畳一間の安アパートだ。 父親が女のところに入り浸りなので、ほとんど一人暮らし状態なここに、凛はよく遊びに来る。 「お腹すいたー」 凛は俺のクッションに顔を埋めてごろごろとしていた。 キッチンに立ってエプロン姿の俺を、手伝おうという気はさらさらないらしい。 「…ちょっと待ってろ」 そんなのにももう慣れてしまったが。 丁度米も炊けたので、俺はおかずを持って凛の元へ向かう。 「ほら」 今日のおかずは、大根と鳥胸の煮付け。 だし巻き卵と油揚げと豆腐の味噌汁。 あとは昨日の残り物のきんぴらごぼうだ。 「さっすがはなぁ〜!いい嫁さんになるよ」 「どうやってだよ…」 呆れたように呟いてご飯をよそう。 それを机に盛れば、凛がまじまじとそれを見ていた。 「…なんだよ」 「んー、はな美人なのに勿体無いなぁと思って」 「はいはい」 お前に言われても嫌味なだけだよ。 本気なのになぁと凛はへらりと笑った。 その笑顔が信じられないんだ。 「じゃあ…」 「なんだ…」 そこから俺は二の句がつげなくなる。 文字通り口を塞がれて。 「はながいき遅れたら、俺がもらってやるよ」 唇が離れても、俺は硬直したままだ。 「はーな?」 目の前で手をひらひらとさせる凛を、俺はグーで殴った。 「いったぁ!」 「さっさと食え!!」 …実はファーストキスでだったことは、口が裂けても、言うもんか。 |
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