? 出会い

初めましてと言う常套句を誰が考えたのかと最近悩みつつ、実際俺はそれに従うのにもいい加減飽き飽きしてきて、何か他にいい言葉はないかと悩んだ末に思いついたのがつい先日。しかしそれが全ての人々に受け入れてもらえるかといえばそうではなく、実際はその言葉は俺が考えたに過ぎない、子供の浅知恵のような物だ。だから俺は貴方達にこう言おうと思う。
どうも初めまして。
結局のところ人間は何処のどいつが考えたかも分からない常套句を使わなくてはいけないのだと、俺は23になった今現在喫茶店で実感しつつある。
さてさて、何を言ってもこの物語は線路を辿る様に進んでいくわけで、俺から一言皆様に質問をしよう。
俺は先ほど言った通り、現在喫茶店でブラックコーヒーと新聞を片手に持ちながら寝ぼけ眼で窓の外を眺めているのだが、はて?窓を一枚隔てた向こうで俺の顔をじろじろと覗き込んでいる女子高生が居るではないか。そしてその女子高生は何故か不機嫌な顔のまま喫茶店に入ってきて、何故か俺の座っているテーブルの向かい側に座るではないか。そしてその不機嫌な顔持ちのまま

「何か奢ってよ」

というのだ。はて?こちらの御方は誰であろう?それが質問だ。勿論俺の知り合いでもなければ、ましてや妹でもない。俺は現在一人暮らしの彼女居ない暦は歳と同じという寂しい人生を送っているわけで、本当にこんな女子高生に向かい側の席に座られる理由等、宝クジで一等三億円を当てるより皆無な訳だ。
その少女は一体全体ピクリとも表情を動かさず、勝手にアイスコーヒーを注文している。
ようやく金縛り状態から正常な状態へと戻した俺は

「待て待て、一体全体君は誰だ?」

と怒るでもなく丁寧に名前を聞いたのだ。その言葉に彼女は

「アンタこそ誰よ?」

と素っ気無く答えるのであった。それはこっちの台詞であり、この少女が使っていい台詞ではないのだが、どうもその少女の顔が怖かったため俺は素直に

「高橋 仙太郎(タカハシ センタロウ)」

と答えたのであった。なんて俺は優しいのだろうと自分でいいながら感動しそうになっていると

「変な名前」

いやいや待て待て待て待て。いきなり見ず知らずの女子高生になんでここまで言われなくてはならないのか?まぁ変な名前としか言われていないが。さすがに傷つくものが俺にもあるわけだ。それよりも、勝手にバンバンと注文していくところは多めに見てやっても良いが、この少女の名前は一体なんだ?俺がそう訊くと

「個人情報保護法により黙秘するわ」

等と言いやがる。
この女子高生一発殴っていいですか?俺が怒りの余り顔を満面の笑みで満たしていると

「なに?文句でもあるの?私は当然のことを言ったまでだし、それと気持ち悪いわ」

目障りだわとも付け加えて、再び運ばれたケーキセットに食らいつく。
何だか泣きたくなってきた・・・

それが俺たちの出会いだったわけで、結局彼女は名前も教えてくれずに立ち去り、残したのは1万2500円の伝票だけだった。やっぱり多めに認めるわけにはいかないようで、彼女とはまたどこかで出会うのではないかという不安を引きずりながら、レジへと進んだのだった。



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