拍手お礼1/1 加地と彼女


はぁーっと息を吐くと白く濁った。

今日は朝早く目が覚めたので、そのまま準備してかなり早い時間に学校へ。只今その登校途中。
ピンと張った冬の空気が気持ち良い。
目を閉じてその空気に浸っていると、後ろから聞き覚えのある声がかかり、意識と視線がそちらへ向く。



「おはよう。今日は随分早いね」

「おはよう加地くん。今日は珍しく朝早く目が覚めたから。加地くんは?」

「僕も同じ。ふふっ早起きは三文の徳だって言うけれど本当だね。
 朝から可愛い恋人に会えたんだもの」

「……ソウデスカ」



相変わらず嫌味なほどかっこいい恋人からの甘い言葉には慣れない。
そういう言葉を平気で言ってのけるこの人の頭の中身を一度見てみたいものだ。
いや、やっぱ見たくない。恥ずかしい言葉でいっぱいな気がするから。



「あ、ねえ、せっかくだからこれから毎日一緒に学校に行かない?君が迷惑じゃなければ、だけど」

「……うん、いいよ」

「本当に!? やった!」



些細なことで大げさなほど喜ぶ加地くん。
それだけ私のことが好きなんだろうなー…なんて心の内で惚気ていると、ふと彼が不思議そうに首をかしげる。



「あれ…?」



唐突に顔が近づいた。ちょ、近い近い……!



「甘い匂いがする…リップ?」

「う、うん。りんごのリップバーム。昨日買ったの」



りんごそのままの形のケースの可愛さと、りんごの匂いというのに惹かれて昨日衝動買いしたリップバーム
実際使ってみたらしっとりするし、香りもいいのでとても気に入っている。
衝動買いでよく失敗するけれど今回は珍しく当たりだったらしい。

じっと唇を見つめる加地くん。と、不意に視線を逸らしふぅとため息をついた。

こういうにおいつきリップって苦手な人が居る。土浦くんとか明らかに苦手そうだ。
加地くんはこういうの嫌いじゃないタイプだと思っていたのだけれど…もしかして苦手なんだろうか。
やっぱり衝動買いは失敗だったかなとがっかりしながらも、念のために加地くんに聞いてみることにした。



「加地くんはこういうの苦手?」

「ううん、そんなことないよ。でも、」



私の耳に加地くんの顔が近づき、私だけにしか聞こえないような小さな声で囁く。



「りんごの花言葉ってね、誘惑って意味なんだ」



耳元で話す声が妙に色っぽくて恥ずかしい。
加地くんから離れようと体を押し返したけれど、簡単に肩を引き寄せられ再び顔が耳に近づく。



「誘惑されて、すごくキスしたくなった。していい?」

「だめ!こんな道路の真ん中で」

「真ん中じゃないよ、端っこにいる」

「そういう意味じゃない」



本当に嫌だという意味を込めて睨むと、諦めてくれたのか肩から手が離れ顔が遠退いた。
良かった…と安心していると左手に指が絡まり強く握られた。
視線を上に向けると、何時も通りの嫌味なくらいかっこいい笑顔。



「じゃあ人の居ないところだったらいい?」

「え?」

「教室にカバン置いたら屋上に行こう。ね?」

「……うん、いいよ」



そのあと加地くんの歩くスピードが急に速くなったのは言うまでもないだろう。








よく見る実物のリップバームをネタにしてみました
拍手お礼にしては長くてすみません






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