――「言葉に潜むアイロニー」より
それはもう必死だった。家に帰ってから思い出し朝一で財前に詰め寄ったが逃げられ、ようやく捕まえたのは昼休み。あんな写真絶対に残しておいてはいけない。
ひともんちゃくの末、財前の携帯は謙也の手の中に。よっしゃ!とガッツポーズ。不機嫌MAXな財前など知るものか。手を伸ばし取り返そうとしても悲しかな一年の年の差という身長。
「ははは!どや!これが十㎝の身長の差やでっ」
財前から奪い取った携帯を持って謙也は走り去った。
数分後、どこからともなく戻ってきた。満足そうに携帯を財前に返す。自分とは違う機種に戸惑ったがなんとか目的は達成できた。そして財前が言っていたフォルダには自分がいっぱいで、もちろん撮られた覚えのないものばかりだったが内心ちょっと嬉しかったり。
「あー…ホンマに消しとる」
「当たり前やろ!第一あんなん撮って誰かに見られたらどないすんねん」
「…そんなヘマしません。……ふーん、でもきわどいのしか消せへんかったんですね」
「そ、そりゃぁ…俺のフォルダとかちょっと嬉しかったし」
「うわ、キショ」
「なんやと!!」
「まぁでも、メインフォルダだけ消しても意味ないし」
「は?」
「SDフォルダにも全部コピーしてあるんで。ってか家のパソコンにもバックアップとってあるから無駄ですけどね」
「……………」
「で、十㎝の身長がなんですって?」
「いや、その…いきおいちゅーか。ノリで…」
「………ノリ?」
「すいませんでした!!!!!」
土下座した挙句、今度さらに言えないような写真をまた撮らされるハメに…俺は悪くないのに!
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