「チッ、仕方ねぇ・・・樺地、起こせ」
「ウス」
「あ、それ、ちょっと待ってくれない?」
「あーん?」
少し高めの声が、響いた
全員が振り返ってみればそこに、一人の少年が居た
色素の薄い灰色の髪は緩く癖がついていて、瞳は紫紺
幼さの残る顔からして、長太郎や日吉と同い年くらいだろう
身長も、低い
見た所、慈郎と同じくらいか
羽織る訳でもなく、両腕を通しただけで、後は引き摺る様に着ているコートは、この真夏であるのに黒
髪に直接くくりつけているのだろう長く垂れたシルバーアクセが、きらり、太陽の光を弾いて輝く
柔らかな微笑みを浮かべながら、トントン、と軽い足取りで階段を下りて来る
見慣れない少年に、誰もが怪訝な表情をする中
唯一人
違う表情をしている者が、居た
日吉だ
彼にしては珍しく大きく目を見開き、まるで幽霊でも見た様な表情だ
「日吉?どないしてん、そないな顔して」
「あははっ、僕がここに居る事に驚いてるんだよね?若は」
「・・・・・・・・・やっぱり・・・・・・『流星』?」
愕然としながら、呟く
かけられた問いかけに、流星と呼ばれた少年は笑みを深くする事で返す
それは、肯定
「わ、その呼び名久々に聞いた。よく覚えてたね」
若凄いや、なんて
見た目通りの子供っぽい笑顔を浮かべると、流星は未だ眠り続ける慈郎の傍へ
「じーろ、ジロー、お、き、て♪」
「んんっ、ん~・・・・・・・・・」
「流星さん、ジローさんの事知ってるんですか・・・?」
「あれ、言ってなかったっけ。僕、慈郎とは遠い親戚なんだよ」
「えぇ!?」
「つまり、あの俺様何様最強って言うか最恐テニス馬鹿な元Polestarとも、僕は親戚になる訳だ」
にこぱっと人懐っこく、笑う
だが、返された言葉に驚いている日吉には、届かない
そんな日吉をあっさりと流し、流星は、眠り続ける慈郎の前にしゃがみ込む
穏やかなその寝顔にあははっと、楽しそうに笑って
伸ばした右手の人差指で、ぷにぷにとその頬を突く
「ね、慈郎、これから試合なんでしょ?」
「あ、あぁ・・・そうだけど」
「ふぅん、そっか」
一度目を細めて、頷いて
じゃぁ、早く起こさなきゃねと、またにこっと笑う
問いかけに答えてくれた向日にありがとうとお礼を言うと、流星は慈郎に向き直る
そして、一言
「慈郎?このまま起きないなら、僕、慈郎の応援もせずに、またどっか消えちゃうよ?」
「りゅーせーいなくなっちゃだめだC―――――――――――!!って・・・あ、あれ?りゅーせー?」
「はい、おはよう、慈郎」
まさに、鶴の一声
今まで眠っていたのが嘘の様なその覚醒に、跡部を筆頭とした氷帝メンバーは驚愕
だが、慈郎の驚きは、それ以上だった
ぱちくりと大きく目を見開き、目の前にしゃがみ込んでいる流星を見る
「っきゃーーーーーーvvりゅーせーだぁぁぁぁぁvv」 「あはは、相変わらずだね、慈郎。でも、再会を喜んでくれるのは嬉しいけど、試合だよ」
「えーーーーー!!やーだ!試合してる間にりゅーせー居なくなるC!!」
「居なくならないよ。今日は慈郎達の応援に来たんだから」
「ホント!?」
「うん。だから、いってらっしゃい♪」
「よーし!行って来るC!!」
ラケット片手に、コートへと走る慈郎
その背中を、やはりにっこり笑顔で見送るのは、流星だ
「・・・・・・流星さん」
「どうかした?若」
「今まで何処に居たんですか」
「わ、怖い顔。若ぃ、元から目付き悪いんだから、そんな顔したらもっと怖くなっちゃうよ?」
「余計なお世話です!!」
「あんしー急かさなくても、後で説明するさー。やくとぅ、うっぴーねぇ待っててよー」
満面の笑顔で言う流星に、若は口を閉ざすしかなかった






Polestar Ⅱ 俺達の唯一つの星~現れた流星






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