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[01:透明]


「へえ、それってそういうものなのね」


彼女が珍しく己に警戒を示さなかったのが、ほんの少しだけ嬉しくて調子に乗った。

いつもだったら、どんな些細な事だって素直に教えてやったりしない。
たとえば、剣の事も、弓の事も、魔法の事も。
それ以外でなら、人の事も、街の事も、国々の事も。
知識という点においては、ほんの少しだけ自負するところもあって、訊かれるなら答えられなくも無い。
時と場合に応じて、必要な知識を選別し、その場に必要な役目になる。
そうやってきたし、これからもきっと、そうやってゆく。

しかし、彼女は違うのだと。

知らぬ事を明らかに示し、知った事を素直に語る。
一つずつ、けれども確かに糧を増やし、彼女でなければ成り得ない役目に変わってゆく。

必要な役目を移り変わるのではなく、常に必要とされる役目に。

透明とは、無色であるのではないのだと、理解したのはつい最近の事。
透けるように鮮やかに、全ての事象を写し取りながら、しかし本来の色と形を明け渡す事無く。
誰かの望むような姿ばかりを、移し身のように演じてきた自分にはその輝きは眩しい。

ほんの少しだけ、その姿を羨む。










―――
認められてきた子の余裕と認められなかった子の羨望。




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